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20世紀、ポーランド。を、探る... [2009]

ツィンマーマンによるシマノフスキのヴァイオリン協奏曲(SONY CLASSICAL/88697439992)で、絶妙過ぎるほどに絶妙なサポートを見せ、今さらながらに、その存在を改めて認識したアントニ・ヴィトと、彼が率いるワルシャワ国立フィル。すっかり、虜... 軽めに追っかけ?なのか、この夏、彼らのアルバムが次々にリリースされ、それら、早速、手に取ってみる。彼らによるシマノフスキのシリーズ、最新盤、1番と4番の交響曲(NAXOS/8.570722)と、ペンデレツキ作品にも取り組む彼らの最新盤、『ウトレーニャ』(NAXOS/8.572031)... 20世紀、ポーランドの作品を、最良のメイド・イン・ポーランドで聴く。


シマノフスキ、青年期と晩年を聴く。

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2つの交響曲の前に、まず、魅力的な演奏会用序曲... リヒャルト・シュトラウスの交響詩を思わせるヒロイックな始まり、そして、むせ返るロマンティシズムと、壮大なオーケストレーション。クラクラ来てしまいそうな音の多さの一方で、音の海に呑み込まれる悦びもあって。また、音は多くとも、絶妙なバランスで、糜爛しそうなあたりを抑えて... どんなに大波が押し寄せようとも、溺れてしまう心配がないのは、シマノフスキの確かなセンス、耳の良さがあってこそか。シマノフスキ・ワールドに至る前の、若きシマノフスキ作品ではあるものの、これはこれで、驚くほど魅力的!
そして、1番の交響曲(track.2, 3)。演奏会用序曲(1905)の翌年の作品、となれば、やはりリヒャルト・シュトラウス風... シマノフスキは、「対位法、ハーモニーの怪物的管弦楽作品」と呼んだらしいが、演奏会用序曲に比べれば、リヒャルト的「怪物」性は、多少、大人しくなり、どことなしに曖昧模糊として、ダークな色合いを見せ始めていて、後のシマノフスキ・ワールドへの兆しを見つけるよう。
そんな、青年シマノフスキの作品を、ヴィヴィットに、ゴージャスに響かせるヴィト+ワルシャワ国立フィル。モダン・オーケストラの機能性をフルに発揮させる後期ロマン派のスタイルが、彼らの機能性の高さ、クリアだけれどドライにはならない音楽性にぴたりとはまる。すると、拡大傾向のロマン主義を引き締めて、青年シマノフスキの「青さ」を昇華し、スコアに並べられた全ての音を活かし切って... 印象主義にオリエンタリスムが濃厚に薫るシマノフスキ・ワールド確立以前の作品というのは、普段なかなか聴くことのないものではあるが、彼らの演奏を以ってすれば、また違うシマノフスキとして、輝き出す。
そして、4番の交響曲(track.4-6)。シマノフスキ・ワールドを確立した後、ポーランドのフォークロワな世界へと傾倒していった晩年の作品... だが、多少なりとも擬古典主義を意識していたのか?ライトで、リズミックなあたりは、まさしく20世紀のモダニスムを印象付けて。また、交響曲とはいえ、ほとんど"ピアノ協奏曲"というあたりが生む、華やかさが魅力的。なのだけれど、ヴィト+ワルシャワ国立フィルならではの発色の良さと、ヤン・クシシュトフ・ブローヤの小気味好いピアノで聴けば、作品のイメージはさらに広がっていくようなところもあって、新鮮。また、フォークロワなテイストが、さり気なく強調されるのか、終楽章などは野趣に溢れるようでもあり。そうした感覚が、モダニスムの生み出すバーバリスティックな表情とも共鳴して、よりダイナミックな音楽が展開されて、胸が空くよう。いや、カッコよくすらあって、シマノフスキのクールなあたりが際立つ!

SZYMANOWSKI: Symphonies Nos. 1 and 4

シマノフスキ : 演奏会用序曲 Op.12
シマノフスキ : 交響曲 第1番 へ短調 Op.15
シマノフスキ : 交響曲 第4番 「協奏交響曲」 Op.60
シマノフスキ : 練習曲 変ロ短調 Op.4-3 〔オーケストレーション : フィテルベルク〕

ヤン・クシシュトフ・ブローヤ(ピアノ)
エヴァ・マルチク(ヴァイオリン)
マレク・マルチク(ヴィオラ)
アントニ・ヴィト/ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団

NAXOS/8.570722




ペンデレツキ、その「前衛」に惹き込まれる。

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ペンデレツキは、どうも取っ付き難い... 「前衛」のペンデレツキも、新ロマン主義へと舵を取ったペンデレツキにも、苦手意識があって、避けるまではいかなくとも、間違いなく、あまり聴いてこなかった。のだけれど、『ウトレーニャ』は、ロシア正教会の早朝礼拝の典礼を用いた朝課(「晩課」はよく聞くけど、「朝課」というのもあるのだなと、勉強する... )の音楽とのことで、興味を持つ。
ペンデレツキはユダヤ系、しかし、キリスト教、教会音楽のジャンルにも数々の作品を作曲し、ルカ受難曲は代表作。前の教皇を輩出したカトリックの国、ポーランドならではのものを、そのあたりに感じるわけだけれど、『ウトレーニャ』では、ロシア正教とは!錯綜する?ペンデレツキの宗教観... というのか、気になるところ。また、その音楽も、さらにさらに広がりを見せるようで、なんとも興味深い。
まだまだ前衛の頃のペンデレツキ。"ゲンダイオンガク"の、骨太なサウンドが展開されていて。ペンデレツキの真骨頂、クラスターの作法があちらこちらに見受けられ、そんなコーラスを聴いていると、やはりクラスターのもうひとりの雄、リゲティの合唱作品を思い起こさせる。が、「塊」の、ゴツゴツした感覚を響かせるペンデレツキのサウンドには、「前衛」という言葉に勢いがあった頃の力強さがあって。また、クラスターばかりでない、より多様な表情を盛り込みつつ、どこかアジアっぽさが滲み、秘儀的で、不思議なスパイスを効かせる。一方で、スパイスとしては、ロシア正教の聖歌、そのものも持ち込まれていて。混沌とした中に、突如、現れる、透明で鮮烈なハーモニーは、強いインパクトと感動的な瞬間を生み出す。
それにしても特異な作品だ。ペンデレツキの音楽とはこういうものなのか?と、今さらながらに確認しつつ、その特異な音楽世界に、ただただ惹き込まれていく。気が付けば、苦手意識など、薄れ、混沌とした前衛の魅力と、見事なコントラストを響かせるロシア正教の聖歌に、心を撃ち抜かれる思い。
20世紀、「前衛」も、21世紀となり、音楽史に回収されて響けば、「現代○○」の生々しさは消えて、クール!また、そうしたクールさを実現してしまうヴィト+ワルシャワ国立フィルの存在があり... 何より、ワルシャワ国立フィルハーモニー合唱団の存在が大きく。この難曲の、屋台骨として、見事に歌い切り、オーケストラばかりでないその高い機能性を見せつけて、前衛からトラッド(ロシア正教会における... )な聖歌まで、振幅の大きいスタイルを器用にこなし、時に圧倒的なハーモニーを響かせる。そうして生み出される力強い音楽に感服させられ、さらに、ソリスト陣の活躍もあり、チーム・ワルシャワ、メイド・イン・ポーランドの底力に、また改めて思い知る。ショパンばかりの国ではないなと...

PENDERECKI: Utrenja

ペンデレツキ : ウトレーニャ

イヴォナ・ホッサ(ソプラノ)
アグニエツカ・レーリス(メッゾ・ソプラノ)
ピョートル・クシェヴィチ(テノール)
ピョートル・ノヴァツキ(バス)
ゲンナジー・ベズベンコフ(バッソ・プロフォンド)
ワルシャワ国立フィルハーモニー合唱団、ワルシャワ少年合唱団
アントニ・ヴィト/ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団

NAXOS/8.572031




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