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次世代、"ピリオド"マスター、競演。 [2009]

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前作、モーツァルトの25番の交響曲(Virgin CLASSICS/234868 2)の、衝撃的な演奏が未だ耳に残る、フランス発、次世代、ピリオド・オーケストラ、ル・セルクル・ドゥ・ラルモニ。彼らが、自慢の腕利きメンバーを推し立てて、ハイドンの2つのコンチェルトと、かつてはハイドン作だと紹介されていたホフマンのコンチェルトを取り上げる新譜(ELOQUENTIA/EL 0917)。ジュリアン・ショーヴァンのヴァイオリン、酒井淳のチェロによるハイドン。アレクシス・コセンコのフルートによるホフマン。それぞれ、弾き振りによる演奏で。若手も気を吐くハイドンのメモリアル、斬新なサウンドを期待して、手に取ってみる。

が、そこには、実に落ち着いたサウンドがあって、かえって驚かされる。18世紀の、優雅でやわらかな気分に充ちたハイドンにして、ホフマンを聴いていると、モーツァルトでの異様とも言えるあのテンションは、何だったのか?と、狐に抓まれたような感覚にすらなる。かと言って、新しいアルバムがつまらないというわけではない。奇抜さで圧倒するのとは違う、活き活きとした音楽が展開されていて。それは、18世紀のたおやかさに、無理して逆らうことのない自然な音楽で、心地良いサウンド...
1曲目、ショーヴァンによる、ハイドン、4番のヴァイオリン協奏曲(track.1-3)。まず、ショーヴァンのヴァイオリンの、丁寧で、すーっと伸びていく感覚が、何とも耳に優しく。ストイックにノン・ヴィブラートを貫こうとせず、軋むようなところは一切ない、そのふくよかなサウンドに惹き込まれる。特に、緩徐楽章(track.2)のメローなあたりは、ショーヴァンの肩の力が抜けた自然体のサウンドが、ぴたりとはまり、ゆったりと、くつろいだ空気が広がる。そんなショーヴァンに導かれ、ル・セルクル・ドゥ・ラルモニのハーモニーもやわらかで、それでいて軽やかで、ソリストとの距離感が絶妙。いつものメンバーからソリストを立てている... というあたりが生み出す親密さが、コンチェルトの仰々しさを薄めて、ソリストをやたら突出させるのではなく、ふんわり包み込んで、何気ない気分で充たすあたりが印象深い。
さて、2曲目は、あっちでもこっちでもその名を見掛ける、気になる"ピリオド"仕事人、酒井淳による、ハイドン、1番のチェロ協奏曲(track.4-6)。昨年の、レ・タラン・リリクでのC.P.E.バッハのコンチェルト(Ambroisie/AM 125)では、若々しいアプローチが印象に残っているのだけれど、ハイドンでは落ち着いた雰囲気で、作品のイメージすら変わるよう。エステルハージ侯爵に仕え始めた頃の、若きハイドン、才気漲るコンチェルトは、スリリング!そんな認識でいたけれど、そんな風に力むことなく、すらすらっと、あまりに自然に流れていって... 驚かされるのは、超絶技巧が繰り広げられる終楽章(track.6)。そのスーパー・テクニックでもって、難曲であることを忘れてしまいそうな、余裕綽々の演奏に、息を呑む。
で、3曲目、コセンコによる、ホフマンのフルート協奏曲(track.7-9)もまた、同じような感触があって... ふわぁーっと、やわらかなサウンドで、たおやかに1楽章、2楽章をまとめての終楽章(track.9)は、さらりと超絶なあたりを吹き切り、驚かせてくれる。さらに、各楽章のカデンツァでは、存分にそのスーパー・テクニックで魅了してくる。一方、ル・セルクル・ドゥ・ラルモニの演奏は、勢いを増して、丁々発止でコセンコのフルートに挑むようなところも。モーツァルトで聴かせた、"現代っ子"感覚が炸裂するようなスリリングさも見せ始め... そんなサウンドを聴いていると、このオーケストラの指揮者である、ジェレミー・ロレールが指揮していたらどうだったろう?なんてことも、頭を過る。
それにしても、次世代、"ピリオド"マスターたち、恐るべし!

HAYDN-HOFMANN CONCERTI

ハイドン : ヴァイオリン協奏曲 第4番 ト長調 Hob.VIIa-4 *
ハイドン : チェロ協奏曲 第1番 ハ長調 Hob.VIIb-1 *
ホフマン : フルート協奏曲 ニ長調 Badley D1 *

ジュリアン・ショーヴァン(ヴァイオリン) *
酒井 淳(チェロ) *
アレクシス・コセンコ(フルート) *
ル・セルクル・ドゥ・ラルモニ

ELOQUENTIA/EL 0917




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