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スメタナ、という分岐点... [2009]

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「モルダウ」に、それらが集められている『我が祖国』...
スメタナといえば、そのたあたりを聴くばかりで、他にどういう作品があるのか、よくわからない。
という状況で、ノセダ+BBCフィルによるスメタナの管弦楽作品集vol.1(CHANDS/CHAN 10413)がリリースされたのは、一昨年。珍しい交響詩の数々に、大いに興味を掻き立てられた。が、その次がなかなかリリースされず、どうなってしまうのだろう?と、心配していたのだが... とうとう、vol.2(CHANDOS/CHAN 10518)がリリース!今度は、オペラの序曲を中心に、『売られた花嫁』など、楽しい音楽も並ぶ。そして、絶好調のノセダ+BBCフィル。今の彼らの手に掛かれば、どんな作品でも輝き出しそう。
ということで、待望のスメタナ、管弦楽作品集vol.2を聴いてみる。

始まりは、オペラ『売られた花嫁』の序曲... 西部劇の幕開きのような、晴れ渡る出だしに、心は浮き立たずにいられない!スメタナ作品の中では、『我が祖国』に次いで、ポピュラーな作品になるわけだが、ノセダ+BBCフィルの演奏で聴くと、また新鮮で。彼らならではの鮮やかさから繰り出される、フォークロワなテイストをふんだんに含んだ音楽は、総天然色のエンターテイメント。国民楽派ならではのキャッチーさに、すっかり耳は持って行かれ、屈託のない楽しみが繰り広げられる。
続く、ポルカ(track.2)、フリント(track.3)、道化師の踊り(track.4)は、どれも活き活きとしていて、ダンサブル。なのだけれど、ノセダの丁寧なアプローチが、けして勢いまかせの音楽にはせず、ダンスの向こうに、チェコの、のどかな風景が見えてきそうなポルカであり、アカデミックなフィールドからは外れて、気の置けない人々同士、はしゃぐ様子も垣間見せるフリントであり、サーカスのキッチュなヴィジュアルを巧みに盛り込んで響かせる道化師の踊りであり... 彼らの描写力に、感服させられる。となると、『売られた花嫁』の全曲を聴きたくなってしまったり。
さて、スメタナ、管弦楽作品集vol.2... 8つあるスメタナのオペラの全てから、序曲や間奏曲、舞曲などが取り上げられていて。歌こそないものの、スメタナのオペラのカタログのよう。もちろん、『売られた花嫁』以外は、なかなか聴くことのできない作品ばかり。貴重なスメタナ体験でもある。そうして並べられた作品には、その時代の先端にあった、独墺系のスタイルをしっかり吸収し、クウォリティの高い音楽を紡ぎ出すスメタナの、充実したサウンドが広がっていて。vol.1での交響詩でも感じた、必ずしも民俗的な方向へと突っ走るのではない、"クラシック"のメインストリームたる、独墺系の上質なロマンティシズムを響かせる音楽と出合うことになる。そこには、スメタナが影響を受けたリストからの流れと、時折、ワーグナーっぽさが漂うようで、この作曲家のイメージを新たにする思いも。
もちろん、国民楽派としてのスメタナのイメージも裏切らない。『売られた花嫁』がそうだし、スメタナ(1824-84)の次世代となる、ドヴォルザーク(1841-1904)を思わせるところもあり。『ボヘミアのブランデンブルク人』のバレエ(track.10)は、まるで、もうひとつのスラヴ舞曲のよう。さらに興味深かいのが、ドヴォルザークのその先、ヤナーチェク(1854-1928)を垣間見る瞬間。『リブシェ』の前奏曲(track.6)のファンファーレは、ヤナーチェクのシンフォニエッタを思わせ、『口づけ』の序曲(track.11)の冒頭も、似ている?気がしてしまう。そんなヤナーチェクの音楽というのは、とにかく独特。チェコ、国民楽派、最右翼にして、そうしたあたりが近代性とも共鳴するようで、他には探せない音楽世界を響かせる。が、まさか、スメタナ作品の中にヤナーチェクの片鱗を見出すとは... それは、ちょっと、エキサイティングな発見で。また、そうしたスメタナ作品を体験することで、ヤナーチェクに至る国民楽派の流れを見つけたようでもあり。
独墺系の上質なロマンティシズムをベースに生み出されるスメタナの音楽。下手をすると、チェコ風であることは、スパイスでしかないのでは?とすら思えるところもあるのだが、間違いなくチェコの臭いを"クラシック"に持ち込んだ"はじまり"の人物。またそれは、表面的なチェコ風であるばかりでなく、もっと深いところに生まれつつあるチェコ独自の響きもあるのか、先に書いた通り、ドヴォルザーク、ヤナーチェクの源流を、スメタナ作品に見つけることに。そうして、このアルバムが見せてくれるものは、独墺系のロマン主義から枝分かれしていこうとする国民楽派の姿。音楽史という壮大なジグソーパズルの、これまであまり気に留めることの無かった空白に、思いがけなく見つけたピースがぴしゃりとはまり、小さなことかもしれないが、妙に充足感を得るような、そんな感覚のvol.2。ノセダ+BBCフィルの、的確かつ、豊かな音楽性に彩られたすばらしい演奏もあって、スメタナの全体像、国民楽派の始まりを探るには、格好の1枚かもしれない

SMETANA: ORCHESTRAL WORKS, VOL. 2 - BBC Phil. / Noseda

スメタナ : オペラ 『売られた花嫁』 より 序曲/ポルカ/フリアント/道化師の踊り
スメタナ : オペラ 『秘密』 序曲
スメタナ : オペラ 『リブシェ』 序曲
スメタナ : オペラ 『悪魔の壁』 より 序曲/悪魔の踊り
スメタナ : オペラ 『ボヘミアのブランデンブルク人』 より 序曲/第1幕のバレエ音楽
スメタナ : オペラ 『口づけ』 序曲
スメタナ : オペラ 『ダリボル』 より 間奏曲
スメタナ : オペラ 『2人のやもめ』 より 序曲/第2幕への前奏曲/第2幕のポルカ

ジャナンドレア・ノセダ/BBCフィルハーモニック

CHANDOS/CHAN 10518




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