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シマノフスキ。そのイメージ、広がって... [2009]

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NAXOSにて、シマノフスキのシリーズを進めている、アントニ・ヴィトと、彼が率いるワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団。前作、スターバト・マーテル(NAXOS/8.570724)に続く、第5弾は、シマノフスキのバレエと劇音楽を集めたアルバム(NAXOS/8.570723)。が、シマノフスキの劇場作品というと、オペラ『ロゲル王』がすぐに思い浮かぶのだけれど、それ以外のものとなると、何があるのだろう?そんな好奇心から聴いてみる1枚。また、ヴィト+ワルシャワ国立フィルによるシマノフスキ... というのも大いに魅力で。ツィンマーマン(ヴァイオリン)によるシマノフスキの2つのヴァイオリン協奏曲(SONY CLASSICAL/88697439992)、その、ソロすら凌ぐ見事な演奏(もちろん、ソロも、すばらしかった!)を思い返せば、期待せずにはいられない1枚。

20世紀前半、ポーランドを代表する作曲家、カロル・シマノフスキ(1882-1937)。その創作活動は、3つの期間に分けられる... というような話しをよく聞くのだけれど、よく耳にする作品というのは、その3つの期間の真ん中、第2期(パリで最先端の音楽に触れ、非キリスト教文化圏で感性を解放し、旅をしながら独自の世界を築いた... )にあたるものが多いような... ロマン派(第1期)の残り香と、神秘主義と、オリエンタリスムを、印象主義で包んだ独特のシマノフスキ・ワールド。個人的には、オペラ『ロゲル王』での、衝撃的な出会いがあり... その圧倒的で、特異なサウンドにブチのめされてしまって、以後、シマノフスキの虜。なのだけれど、このアルバムに収められたバレエと劇音楽は、第1次世界大戦後、第3期にあたる作品。
「ポーランド人」というアイデンティティを、強く意識するような出来事(ロシア革命)、政治状況(ポーランド独立)が重なり、民族主義的なスタイルへとシフトしていく第3期。そうしたあたりに、反動的(?)なイメージがあって、シマノフスキ作品とはいえ、あまり興味が持てなかったのだけれど。神秘主義、印象主義を通過して来ての第3期、フォークロワな要素をふんだんに用いたとしても、シマノフスキの鋭敏な感性はしっかりとあって。1曲目、バレエ・パントマイム『ハルナシェ』(track.1-11)から、思いがけなく魅了される。
で、この『ハルナシェ』、ポーランドでもその南、スロヴァキアと国境を接するタトラ地方のメロディやダンスを織り込んでいるとのこと... となれば、バルトークと、そう遠くはないサウンド(タトラ山脈の南麓は、バルトークの民謡収集のテリトリーでもあり... )。間違いなく、そのテイスト、似ているところも。また、フォークロワの安易なコピーに留まらないあたり、バルトークのようなスタンスもあって、モダンな民族主義のエッジの鋭さが印象的。後半、力強いコーラスが加われば、プロコフィエフの『アレクサンドル・ネフスキー』のような雰囲気もあり、シマノフスキの中に、スラヴの音楽的DNAを見つけたような、そんな興味深さも。何より、そのアグレッシヴな歌声に魅了される。
けれど、『ハルナシェ』、こんなにも魅力的な音楽だった?
ラトル+バーミンガム市響の録音で聴いているはずの『ハルナシェ』。その印象は、まったくと言っていいほど残っておらず、ヴィト+ワルシャワ国立フィルによる演奏に触れて、驚くほど新鮮な思いをする。のはなぜ?いや、間違いなく、ヴィト+ワルシャワ国立フィルのクウォリティの高さと、何より、魅力的な音楽を残したポーランドの作曲家、シマノフスキへの大きな共感があるからこそ... 彼らならではのクリアな響きから生まれる輝きが、民族主義の持つ、多少の泥臭さも、モダンでクールな形に仕上げて。かと言って、洗練されきってしまうのではない、アグレッシヴさも十分に響かせて、第3期の魅力をきっちりと伝えてくれる。

さて、民族主義に、まだ、あまり傾いていない頃の2曲目、パントマイム『マンドラゴラ』(track.12-14)では、新古典主義?近代イタリアの作曲家を思わせるような、ライトなテイストに、驚かされ。第2期から第3期へと移る頃の作品でありながら、そのどちらとも違うイメージは、シマノフスキというイメージを、さらに拡張するような、おもしろいテイスト。3曲目、ミチンスキの戯曲『ポチョムキン公』の5幕のために書かれた付随音楽(track.15)では、第2期の雰囲気を漂わせ、しっとりとした音楽が印象的。

SZYMANOWSKI: Harnasie ・ Mandragora

シマノフスキ : バレエ・パントマイム 『ハルナシェ』 Op.55 ***
シマノフスキ : パントマイム 『マンドラゴラ』 Op.43 **
シマノフスキ : ミチンスキの戯曲 『ポチョムキン公』 5幕 のための 付随音楽 Op.51 *

ヴィエスワフ・オフマン(テノール) *
アレクサンドル・ピンデラク(テノール) *
エヴァ・マルシニク(メッゾ・ソプラノ) *
エヴァ・マルチク(ヴァイオリン) *
カジミェシュ・コシュラツ(チェロ) *
ワルシャワ国立フィルハーモニー合唱団 *
アントニ・ヴィト/ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団

NAXOS/8.570723




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