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サヴァール、ヴァイオル、ケルティック。 [2009]

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ここのところ、「近代」の濃いサウンドが続いたので、気分を変えてみようかなと...
で、手に取ったのが、ジョルディ・サヴァールの最新盤。古楽アンサンブル、ハープ・コンソートを率いるアンドルー・ローレンス・キング(ハープ)を招いて、ヴァイオル(=ヴィオール)とハープで奏でる"THE CELTIC VIOL"(Alia Vox/AVSA 9865)。アイルランド、スコットランドの民謡をたっぷりと盛り込んで、オキャロランの作品なども取り上げて、トラッドな世界に染まるアルバム。その、瑞々しくもセンチメンタルなサウンドは、梅雨の明けない今頃の気分(って、今日は完全に夏なんだけれど... )にしっくりくるかなと...

ところで、サヴァール。トラッドな音楽に挑むというあたり、意外な感じもする。自身が率いる古楽アンサンブル、エスペリオンXXIとは、よく、ワールド・ミュージックとのボーダーを行き来しているわけだけれど。それらエスニックなサウンドで... そんなサヴァールが、ガンバ/ヴィオールの名手として、アイルランドやスコットランドのケルティックなサウンドを奏でるわけだ。どんなサウンドが生まれてくるのかと、興味津々。
一方で、女房役には、アンドルー・ローレンス・キング!ハープの使い手... というあたり、古楽の世界にありながらも、やはり、ケルティック(ハープはアイルランドの国章... )の世界とは親密な異才。自身が率いるハープ・コンソートでは、オキャロランのアルバム(deutsche harmonia mundi/05472 77375 2)などもリリースしており、トラッドはお手の物?となれば、ハープがイニシアティヴを取る?なんて、漠然とイメージしていたのだが... ヴァイオルの後ろに控え、絶妙のサポートを見せるローレンス・キングのハープ... 前に出過ぎず、やさしげに、囁くように奏でて、印象的。控え目ながらも、ハープの持つ、アルカイックな風合いを、美しく響かせて、サヴァールによるトラッドを引き立たせる。
あくまで、"THE CELTIC VIOL"であり、サヴァールによるヴァイオル(時々、フィドル... )の響きを味わい尽くすアルバム。ということで、サヴァールが聴かせる!それでいて、サヴァールは、やはり、サヴァール。トラッドの世界に深く踏み込みながらも、サヴァールのカラーというものを、そこはかとなしに見せてくる。ケルティックの瑞々しく、人懐っこく、メロディックな世界に、この巨匠、特有の枯れたトーンというのか、「古楽」というフィールドから踏み込む落ち着きというのか、抑えた表現が、トラッドの魅力と共鳴しつつも、独特の洗練に導くようでもあり。また、その選曲も、たっぷりと民謡を盛り込みながらも、オキャロラン(カロラン)など、17世紀から19世紀まで、アイルランド、スコットランドで活躍した音楽家たちの作品も集め、「ピリオド」や「古楽」ともそう遠くはない、クラシカルなトラッド(ケルティックにおける"ピリオド"?)でまとめてくる。
トラッドに踏み込むサヴァールと、サヴァールのフィールドに引き寄せられるトラッド。その兼ね合いが、絶妙で。ヴァイオルと、控え目のハープだけ... 歌もなく、パーカッションもなく、そのストイックな音楽は、ガンバ/ヴィオールの名手としてのサヴァールの、これまでの偉大な仕事の延長線上に現れたトラッド。そうして、浮き上がる、サヴァールのすばらしい弓捌き!ストイックな分、サヴァールの味わいがより引き出され、ヴァイオルが渋く香り立ち、静かに、深く、魅了してくる。そして、「古楽」から少し外れたところで、サヴァールの音に改めて触れると、この巨匠のただならなさを思い知らされもする。
「トラッド」だからこそのシンプルさ、素朴さの中で、サヴァールの音楽性は、のびのびと広がり、さり気なく息づき、それでいて、「古楽」と「トラッド」の相性の良さを見せる。何より、心地よい音に満たされたアルバム!その、オーガニックなサウンドに包まれてしまえば、なんだか、やさしい心地に...

THE CELTIC VIOL - LA VIOLE CELTIQUE
JORDI SAVALL ― ANDREW LAWRENCE-KING


アイルランド民謡 : 音楽の司祭/スコットランドのメアリー
キャプテン・サイモン・フレイザー : ニール・ガウのための「カレドニアの叫び」
   〔『スコットランド山岳地方と島嶼部特有の歌と調べ』 1816年刊 より〕
アイルランド民謡 : スカリフのユーモア
ナサニエル・ガウ : ストラススペー 「アラステア・マクアラステア」
ライアンの大コレクション : トム・ブリッグのジグ
ライアンの大コレクション : ジグ 「ザ・グロビー(ゴビー)・オウ」
ライアンの大コレクション : モイラ卿/人力車
アイルランド民謡 : サッカウのジグ
スコットランド民謡 : 艱難辛苦こそ我が運命
ウィリアム・マーシャル : キーサック礼拝堂 〔1822年のコレクション より〕
キャプテン・サイモン・フレイザー : グードワイフは彷徨い人を入れる 〔前掲書 より〕
ジェイムズ・マクファーソン : マクファーソンの哀歌と変奏
スコットランド民謡 : リール 「トゥーロッホゴルム」
スコットランド民謡 : 可愛いペギー
作曲者不詳 : それはエディンバラの街の1ハロン以内でのことだった
   〔プレイフォード刊 『イングランドの舞踏教師』(1696) より〕
キャプテン・サイモン・フレイザー : 若く麗しいメアリー 〔前掲書 より〕
アイルランド民謡 : ダウドのリール
スコットランド舞踏 : レディー・メアリー・ヘイのスコットランドのリズム
トゥールロッホ・カロラン : カロランのいとまごい
ドニゴール(ドネガル)民謡 : ガスティのうかれ騒ぎ
ライアンの大コレクション(スコットランド民謡) : 移民のリール
トゥールロッホ・カロラン : オーウェン・ロウ・オニールの哀歌
W.B.レイバーン、第3巻 : ベアトリス王女
スコットランド民謡 : チャーリー王子のエディンバラへの最後の一瞥
アイルランド民謡 : 上の階へ旅行しな(シングル・ジグ)
ウィリアム・マーシャル : ギプトンのマクファーソン夫人 〔1822年のコレクション より〕
アイルランド民謡 : タットルの
ナサニエル・ガウ : 彼の2人目の妻の死への哀歌
アイルランド民謡 : 間抜け穴の中の雄ガチョウ

ジョルディ・サヴァール(トレブル・ヴァイオル、トレブル・フィドル)
アンドルー・ローレンス・キング(アイリッシュ・ハープ、プサルテリウム)

Alia Vox/AVSA 9865




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