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ヴィラ・ロボス、没後50年に聴く、ショーロス。 [2009]

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ヘンデル、ハイドン、メンデルスゾーン... 2009年のメモリアルは、クラシックのメインストリームを飾る、錚々たる巨匠たちが居並び、圧倒されてしまう。一方で、ブラジルを代表する作曲家、ヴィラ・ロボスの没後50年のメモリアルでもある。が、南米の作曲家というと、クラシックのメインストリームからはかなり遠く、同じメモリアルでも、どうしても、目立ちにくい。しかし、メインストリームから距離がある分のおもしろみは、間違いなくある。で、そんな「おもしろみ」が詰まった、ヴィラ・ロボスの気になるアルバムを手に取ってみる。
BISが、このメモリアルに向けて、着々と進めて来た、ジョン・ネシュリングと、彼が率いたサン・パウロ州立交響楽団による、ヴィラ・ロボスのショーロスのシリーズ、全3巻。その完結編、序章に補遺も含んでのvol.3(BIS/BIS-CD-1520)を聴く。

ネシュリングと、サン・パウロ州立響によるショーロスのシリーズ... vol.1(BIS/BIS-CD-1440)では、渡鬼のテーマにびっくりさせられ、vol.2(BIS/BIS-CD-1450)では、南米の近代音楽のクールさを楽しんでの、vol.3、完結編... の前に、ヴィラ・ロボスによるショーロスなのだが、全部で14番まであったらしい。しかし、最後の2つのスコアは失われてしまって、このシリーズでは12番までを収録。そこに、ショーロスへの序章、補遺となる2つのショーロスも加えて、今、現在、聴くことのできる、ヴィラ・ロボスのショーロス、全てを網羅。ヴィラ・ロボスの興味深くも極めて自由な音楽世界を、「ショーロス」という括りから様々に聴かせてくれるわけだ。
で、その完結編、vol.3なのだが、始まりは、ギターとオーケストラのためのショーロスへの序章(track.1)。往年の映画音楽を思わせる、ロマンティックで充実のオーケストラ・サウンドに彩られた序奏の後で、独奏ギターに、ブラジルならではのサウダージが滲み、印象的。モダンなサウンドの中に漂うラテン・ムードが、ヴィラ・ロボスという作曲家のハイライトを見せるようであり、これからの予告編のようでもあり、まさに序章。続く、2つのショーロス(track.2, 3)は、ヴァイオリンとチェロの二重奏。ドヴォルザークのようなフォークな感覚と、ラヴェルのようなダンディな感覚が相まって、独特の艶やかさを聴かせる。パリに滞在中に作曲されたとのことだけれど、やはり同じ二重奏によるラヴェルのクールなソナタに劣らず、ヴィラ・ロボスのセンスを感じさせる佳曲。
3曲目、パリへ旅立つ前の、フルートとクラリネットの二重奏によるショーロス、2番(track.4)は、モダンとラテンの融合が絶妙!どこか飄々としていながらも、艶やかで、カラフル。そんな気分を、より膨らませたのが、4曲目、男声コーラスと管楽アンサンブルによる、3番、「きつつき」(track.5)。ショーロスには、コーラスも含まれるのか?!と、シリーズ中、最も異彩を放つ作品かもしれない。で、ちょっと思い付かないような木管と男声コーラスという組合せが、思い掛けない相性を見せて、ほのぼのとユーモラス!5曲目は、女声も加わり、混声コーラスとオーケストラによる、10番、「愛情の破れ」(track.6)。またタイトルからしてヘヴィーで、期待に違わぬラテン風ドラマティックな展開... で、コーラスは後半に登場するのだけれど、これがプリミティヴで、盛り上げる!最後は、オーケストラによる、12番(track.7)。ヨーロッパの作曲家たちのオーケストレーションに引けを取らず、充実のオーケストラ・サウンドを堂々と響かせて、シリーズにおける集大成的な印象を受ける作品。
そんなシリーズを聴き通してみて、ますますわからなくなる「ショーロ」のイメージ。ヴィラ・ロボスによるショーロスは、あまりに多様で、戸惑いすら感じるのだけれど... そのごった煮的なあたりこそが魅力か... メインストリームから距離があった分の「おもしろみ」、前衛に突っ走らない、ポピュラー・ミュージックも常に気になっていたのだろう、モダニスト、ヴィラ・ロボスの魅力... それらを見事にすくい上げ、ショーロスのシリーズを完成させたネシュリング+サン・パウロ州立響、ブラジル出身のソリストたちの仕事ぶり、リスペクトせずにはいられない。また、ショーロスと一括りにしながらも、ギター独奏から、室内楽、コーラスに、もちろんオーケストラまで、ひとつのシリーズにまとめるにはあまりに幅があり過ぎるところを乗り越えて、現存12番までと、序章、補遺までを収録してシリーズを完結させたBISも、いい仕事をしてくれる!ヴィラ・ロボス、没後50年のメモリアルに、すばらしい贈り物となったことは間違いない。特に、vol.3は、よりヴァラエティに富み、充実していて... となると、失われてしまった13番、14番を、無性に聴いてみたくなる... 残念!

Villa-Lobos ・ Choros, Vol. 3 (Nos 2, 3, 10, 12 etc.) ・ OSESP / Neschling

ヴィラ・ロボス : ショーロスへの序章 〔ギターとオーケストラのための〕 **
ヴィラ・ロボス : 2つのショーロス(補遺) 〔ヴァイオリンとチェロのための〕 **
ヴィラ・ロボス : ショーロ 第2番 〔フルートとクラリネットのための〕 **
ヴィラ・ロボス : ショーロ 第3番 「きつつき」 〔男声合唱と管楽アンサンブルのための〕 **
ヴィラ・ロボス : ショーロ 第10番 「愛情の破れ」 〔混声合唱とオーケストラのための〕 **
ヴィラ・ロボス : ショーロ 第12番 〔オーケストラのための〕 *

ファビオ・ザノン(ギター) *
クラウディオ・クルス(ヴァイオリン) *
ヨハネス・グラムシュ(チェロ) *
エリザベート・プルンク(フルート) *
オヴァニール・ブオシ(クラリネット) *
サン・パウロ州立交響楽団合唱団 *
ジョン・ネシュリング/サン・パウロ州立交響楽団 *

BIS/BIS-CD-1520




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