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久々という魔法で、チャイコフスキーを... [2009]

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久々にチャイコフスキーを聴く!
裏を返せば、普段、あまりに"クラシック"のメインストリームから外れている... ということになるのだろうけれど... メインストリームから外れたあたりから、チャイコフスキーを聴くというのは、ワクワクさせられる。あの、キャッチーな世界へと帰るわけだ。構造はシンプル!けど、醸される気分はドラァグ!その微妙なバランスが好き。"クラシック"のメインストリームに間違いなく存在しながらも、他の作曲家とは違うベクトルで音楽を成り立たせている?チャイコフスキー?至極真っ当な"クラシック"のようでいて、実は、かなり独特のセンスが、この作曲家に漂うように感じるのは、極めて個人的な感覚?
と、久々に、フルスロットルで楽しめたチャイコフスキーは、ポッペン率いるドイツ放送フィルによる4番の交響曲と、「1812年」を収録した新譜(OEHMS CLASSICS/OC 728)。

クリストフ・ポッペン(b.1956)、"ピリオド"対応可、一味違うヴァイオリニスト... が、やがて指揮台にも進出して、ミュンヒェン室内管弦楽団の芸術監督を務める。室内という規模だからこその、絶妙な仕事ぶりで、次々に興味深いアルバムをリリース。そして、次なるステージへ... とうとう、フル・オーケストラもその手中に。新生、ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団(ザールブリュッケン放送響と、カイザースラウテルンSWR放送管の合併により、2007年に誕生... )の音楽監督に就任。で、この新体制の第1弾が、メンデルスゾーンの交響曲全集(OEHMS CLASSICS/OC 709)。最新、第2弾が、チャイコフスキーの4番の交響曲。そんな、ポッペンの新たなステージが、大いに気になるわけだ。
凝ったプログラミングで、巧みに"クラシック"のメインストリームから距離を取って来たポッペンが、ここに来て、まさにメインストリームを突き進むあたり、なかなかおもしろい反動で。けれど、やはりポッペン。これまで歩んで来た道のりは、独特のサウンドとして、ドイツ放送フィルの中に籠められている。聴き馴染んだ4番の交響曲も、また新たな感覚で向き合えるような、おもしろさがある。
当然ながら(?)ロシアン・ロマンティックなあたりは抑えつつ、クラリティの高い演奏を目指す。それは、間違いなく、現代志向のオーケストラ・サウンドなのだろうが、冷たくはならない彼らの温度感が、妙に人肌感覚で、耳に馴染んでしまう。それでいて、十分にテンションは保たれ、アグレッシヴ。が、チャイコフスキーの交響曲の持つシンプルさ、ダイレクトさが、マッチォな方向へと流れがちなあたり、きっちりブレーキを掛けて、ライヴというのに、最後の最後まで、実に冷静だったり... そうして紡がれるサウンドには、ロシアはロシアでも、国民楽派とは一線を画す、チャイコフスキー的スノッブさを、巧みに香らせて、なんとも魅惑的。
4番の交響曲というと、1楽章、冒頭の、黙示録的ファンファーレのテーマが、強く印象に残るわけだが、ポッペン+ドイツ放送フィルの演奏は、深刻ぶったテーマも、どこか、『眠れる森の美女』や、『白鳥の湖』のようなドラマちっくさで、やがて迎えるだろうハッピーエンドに結び付けられて... その、「いかにも」な出だしは、ドォラッグ!3楽章のピツィカート(track.3)や、終楽章のリズミカル(track.4)な盛り上がり方は、間違いなくポップ!交響曲でありながら、絵本的(=バレエ)な世界を読み解いてしまう?いや、誰の手にも染まっていないチャイコフスキーの、ピュアなカラー(ポップでドォラッグ?)がしっかりと活きて、音の全てがヴィヴィットな輝きを放ち始めるあたり、ポッペンの希有なセンスがあってこそ。印象的。
そして、今さらながらに、聴き入ってしまう「1812年」(track.5)... ポッペン+ドイツ放送フィルの丁寧な演奏で改めて聴くと、チャイコフスキーの描写力に恐れ入る。大砲が鳴らされて、イロモノ系の派手な曲。ぐらいのイメージだったが、始まりののどかな情景に始まり、綴られる刻一刻と変わる戦況は、まるで映画音楽のよう... だが、描かれるのは迷彩色を着た兵士たちではない、綺麗なカラーリングの"くるみ割り人形"のような兵士たちが隊列を組む、古典的な戦争(ナポレオン戦争)で... 19世紀の華麗な戦争画のような華々しさで見せてくる、ポッペン+ドイツ放送フィル。最後は、何もかもが吹き飛んでしまう、キャッチーで、テンション上がりまくりの"V"。ヴィクトリー!理屈抜きに元気が出てしまう!

聴き終えて、こんなにも充足感を味わえるとは!久々であることの魔法は、実に大きい... いや、もちろん演奏の力も大きくて... どこか、気の置け無さを感じてしまうポッペン+ドイツ放送フィルのサウンド。だからこそ、力むことのない、"ラヴリー"なチャイコフスキーが立ち現われて、この作曲家、この交響曲に、新たな感覚で向き合える。そして、ポッペン+ドイツ放送フィルのこれから... 彼らが、どんな風に展開していくのか、その「反動」っぷり、ますます楽しみに!

Christoph Poppen ・ Peter L. Tschaikowsky

チャイコフスキー : 交響曲 第4番 ヘ短調 Op.36
チャイコフスキー : 序曲 「1812年」 Op.49

クリストフ・ポッペン/ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団

OEHMS CLASSICS/OC 728




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