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名曲と、名曲の背景を見つめて、 [2009]

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昨年、Virgin CLASSICSからリリースされた、テツラフによるブーラムスのヴァイオリン協奏曲(Virgin CLASSICS/502109 2)。すばらしい演奏の一方で、興味を引いたのが、ブラームスの名曲に深く携わった、ヴィルトゥオーゾ、ヨアヒムの2番のヴァイオリン協奏曲も収録されていたこと... 名曲と、名曲の背景に迫るカップリングに、新たな発見もあって、実におもしろかったのだが、今年は、チェロの名曲で?
Virgin CLASSICSのチェロのエース、ゴーティエ・カピュソンの最新盤は、ドヴォルザークのチェロ協奏曲(Virgin CLASSICS/519035 2)。そして、この名曲の誕生にインスピレーションを与えたという、ハーバートの2番のチェロ協奏曲をカップリング(この組み合わせを見出したのは、ヨーヨー・マ... )。
名曲を、ステレオタイプから切り離す触媒として、埋もれてしまった同時代の作品にもスポットを当てる... そんなカップリングには、学究的な堅苦しさがあるのでは?なんても思いがちだが、生まれる新たなイメージは、間違いなく新鮮で。かつ、新たに、魅力溢れる作品を知るきっかけを与えてくれて、凝り固まり気味(?)な"クラシック"にとっては、とても、ハッピーなことなのかも。ということで...

ヴィクター・ハーバート(1859-1924)。
ダブリンで生まれ、シュトゥットガルトで学び、まずはチェロ奏者として音楽活動をスタート。その後、アメリカに渡り(1886)、チェリスト、指揮者として活躍。作曲もこなし、ミュージカルの前身、アメリカのオペレッタの世界で成功したとのこと。いや、ブロードウェイ・ミュージカルの源流にいたとは、なかなか興味深い。そんなハーバートによる2番のチェロ協奏曲だが...
ドヴォルザークの名曲が完成する1年前、作曲者の独奏で、ニューヨークで初演(1894)。ドヴォルザークは、その時の演奏に触れ、自作へとつなげて行くことに... となれば、やはり、どこかで同じ臭いのする音楽というのか。もっと、踏み込むならば、ドヴォルザークの名曲の、あの力強いメロディ、たっぷりとロマンティックな表情、たまらないキャッチーさは、ここから来たのか... といった感触も。
一方で、かの名曲とは違って、聴き慣れた感覚が無い分、新鮮に聴こえてしまう。いや、実際に新鮮!1楽章(track.4)、冒頭の、鮮烈に切り込んでくるチェロのソロからして、インパクトは十分。ドヴォルザークの名曲、同様に、まさに"19世紀"のロマンティシズムをしっかり湛えつつ、どことなしにポップな疾走感が感じられて、印象的。オペレッタの世界での成功... を思わせる、2楽章(track.5)の、甘くメローなテイスト(なんと魅惑的な!)、終楽章(track.6)での力強く、ドラマティックで、ヴィルトゥオージティが紡ぎ出すゴージャスさ、それでいてキャッチーな感覚は、やがて、ブロードウェイへと続く道?聴衆の耳へのサービス感覚は、ドヴォルザークより上かもしれない。そして、チェリストが書いたコンチェルト... ということもあってか、ゴーティエのチェロは、ドヴォルザークの名曲よりも、より伸びやかに歌っているような印象も。

そして、名曲だが... 聴き慣れた(演奏し尽くされた?)ドヴォルザークのチェロ協奏曲に、チェロの若きエースが、真摯に向き合って生まれる瑞々しさが印象的。ゴーティエのチェロは、変に繊細になるでもなく、かと言って大味になるでもなく、しっかりとしたサウンドを響かせながら、どこかにあった、この名曲の渋さ(名曲ゆえの渋さ?)を、鮮やかさに変化させてくる。ゴーティエの若さは、ポジティヴに昇華され、そんなピュアな音楽性を前に、名曲も裸にされるようで... 生まれたてのような新鮮さが漂い、ところどころ、初々しくすらあって、そこがまた魅力的に響き... ハーバートのコンチェルトと一緒に聴く効果だろうか?なかなか興味深い。
さらには、パーヴォ・ヤルヴィ+hr響による好演もあって... まず、1楽章(track.1)の、たっぷりと取られたオーケストラによる序奏から、パーヴォならではの独特の鮮やかさを放ち、これからの展開に、わくわくさせられる。そんな、パーヴォの指揮ぶりは、ゴーティエの若さと巧く共鳴し、全体に、ロマンティックを強調するのではなく、丁寧さが生む、色彩感が印象的。ヤナーチェク... とまでは行かなくとも、ドヴォルザークの名曲に、やはり、チェコの作曲家ならでは?な、独特のヴィヴィット感を捉えて、発見も。何より、力任せでないあたりが、かえって作品のダイナミズムや、輝きを解き放つようで、やはり、新鮮!
それにしても、新鮮な悦びでいっぱいのアルバム... 名曲と、名曲の背景を見つめて、新たに拓けてくる世界に遊ぶような... ステレオタイプという鎧を脱いでしまうと、"クラシック"もまだまだ新鮮なのかも?

DVOŘÁK - HERBERT : CELLO CONCERTOS
GAUTIER CAPUÇON - FRANKFURT SINFONIE ORCHESTRA / PAAVO JÄRVI


ドヴォルザーク : チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104
ハーバート : チェロ協奏曲 第2番 ホ短調 Op.30

ゴーティエ・カピュソン(チェロ)
パーヴォ・ヤルヴィ/hr交響楽団

Virgin CLASSICS/519035 2




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