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クラシックのイメージをすり抜けて、フランス... [2008]

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はぁ~ 今年も、もうすぐ、終わってしまいますね。気忙しくも、どこかセンチメンタルにもなって... そんな、師走、フランス音楽をいろいろ巡ってみたのだけれど... メシアンに、ペクといった、近現代の興味深い世界に、「清しこの夜」が聴こえて来るオネゲルのクリスマス・カンタータ、バロックからロココへとうつろう頃のロワイエ、古典主義からロマン主義へとうつろう頃のボエリ、そしてドビュッシーと聴いて来て、フランス音楽のただならぬ広がりを思い知らされつつ、やっぱり感じ取ることのできるフランスらしさに惹き込まれ... いや、その雰囲気あるサウンドの魔法たるや!クラシックというジャンルは、やっぱりアカデミックで、型枠というものからはみ出すことが難しい部分(これって、ドイツ由来かなと... )があるわけだけれど、そういう型枠をあまり意識させないのがフランス音楽なのかも... クラシックに在って、ある種の自由さが、フランスの音楽を特別なものにしている気がする。
そんなフランスらしさがキラキラと輝き、より香り出す音楽を聴いてみようかなと... ジャン・ギアン・ケラスのチェロに、アレクサンドル・タローのピアノという新鮮なコンビで、ドビュッシーとプーランクのチェロ・ソナタ(harmonia mundi/HMC 902012)を聴く。

1曲目、ドビュッシーのチェロ・ソナタ(track.1-3)、1楽章の冒頭から、違う!クラシックだけれど、クラシックから解き放たれたような、やわらかさを見せるその音楽!ピアノのちょっと思わせぶりなメロドラマティックな序奏に導かれて、夜が明けるように瑞々しく奏でられるチェロの伸びやかさ... はぁ~ 印象主義だよ... この繊細にして鮮烈な色使い、もはや溜息しか出ない。続く、2楽章(track.2)は、セレナードということだが、どことなしにジャジーで、チェロの落ち着いた響きから夜の匂いを漂わせ、怪しくも粋で、ドビュッシーのダンディズムが光る!そこから、陽気に始まる3楽章(track.3)のリズムが軽やかに爆ぜてフォークロワ調の音楽が紡ぎ出されると、グっとエキゾティックな表情も見せて、ドビュッシーの筆は自在。どこへ転がって行くのかわからないような、思い掛けなさが、ワクワクとした楽しさを引き出す。一転、プーランクのチェロ・ソナタ(track.5-8)では、この作曲家ならではの擬古典主義が、形式張った音楽を飄々と展開して、ドビュッシーと絶妙なコントラストを描き出す。もちろん形式張っても、洒脱なアクセントに彩られ、堅苦しさを洒落たものに昇華できてしまうのがフランスの作曲家のDNA... そこに見事な洒脱さを加えることができるのが、プーランクの魅力。とはいえ、ドビュッシーの後で聴くと、プーランクは、思いの外、クラシカル。第1次大戦の最中、1915年に作曲されたドビュッシーに対し、第2次大戦後、1948年に完成された作品は、今、振り返ってみると、少し奇妙に思えるのかもしれない。が、その奇妙もプーランクか... 独特なヴィンテージ感を醸して、味わいとなっているのだから、擬古典主義の確信犯なのだろうなと...
というソナタの一方で、よりライトにフランスを楽しむ、アレンジをメインとした小品も取り上げられるのだけれど、これがまた魅力的!ドビュッシーのピアノのための小品、「レントより遅く」(track.4)では、主旋律がチェロにより歌われ、そのメローさがより鮮やかになり、かつチェロの落ち着きが、絶妙に効いて、オリジナル以上の豊潤さを引き出すのか... となると、クラシックであることを忘れてしまいそうなトーンがこぼれ出し、何ともドリーミン。プーランクのフランス組曲(track.11-17)では、本来、オーケストラが奏でるフォークロワのプリミティヴさを、巧みにチェロとピアノに落し込み、かつチェロの枯れたトーンが、フランスの田舎の風景をセピア色に切り取るようで、詩情を生み出す。オーケストラでは、少し突飛に感じていたものが、チェロとピアノに集約されたことで、落ち着きが広がり、プリミティヴさはファンタジーに昇華されるようで、絵本を捲るような楽しさを見出す。
何物にも囚われない突き抜けた存在感というか、音楽そのものに対しピュアでナチュラルな姿勢が、そのルックスに見て取れそうなケラス。彼が奏でるチェロというのは、しなやかにクラシックであることをすり抜けて、その音楽が孕むクラシックに納まり切らない可能性を増幅しつつ、それを、あまりに何気なく表現してしまうあたりが凄い。こういう感覚で聴くフランス音楽は、すっきりと軽やかに歌いながらも、先が読めないようで、惑わされるところも... が、この惑わされる感覚が、たまらない。やさしく撫でられるかと思えば、擽られるような... そんなケラスの何気なさに捕まると、タローのピアノは、幾分、堅くも感じられるのか... けど、プーランクの擬古典主義では、その堅さが、しっくりと来て、今度はピアノが輝き出す。そんな2人から流れ出すサウンドは、クラシックという枠組みをさらりと消失させて、どこにも属さないようなセンスで、聴く者を軽やかに酔わす。フランスの次世代マエストロとして、世界的な認知が進むケラス、タローだけれど、クラシックという閉じた世界から向けられる期待や視線を巧みに避けて、自分たちだけの音楽を楽しんでいるような、そんな感覚がこのアルバムには充ち満ちている。だからこそ映える、フランスの音楽、何て素敵な!

DEBUSSY - POULENC QUEYRAS - THARAUD

ドビュッシー : チェロ・ソナタ
ドビュッシー : レントより遅く
プーランク : チェロ・ソナタ
プーランク : バガテル ニ短調
プーランク : セレナード 〔『陽気な歌』 より 第8曲〕
プーランク : フランス組曲
ドビュッシー : スケルツォ
ドビュッシー : インテルメッツォ

ジャン・ギアン・ケラス(チェロ)
アレクサンドル・タロー(ピアノ)

harmonia mundi/HMC 902012




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