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クリスマスまで、あと... [2008]

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クリスマスまで、あと一週間... ということで、オネゲルのクリスマス・カンタータ...
けしてメジャーとは言えないし、バッハのクリスマス・オラトリオに匹敵する作品、なんても言えないけれど、実は、素敵な曲で... 後半部、クリスマス・キャロル("きよしこの夜"はもちろん... )がいろいろコラージュされて、そんな音楽を聴いてしまうと、否が応でも気分はクリスマスになってしまう。いや、別に、そういう気分になりたいわけでもないのだけれど、何か、こう、クリスマスのハッピー感が籠められた音楽には、ひねくれ気分のモノトーンな日常にも、彩色をほどこしてくれるような...
が、その録音となると、ありそうであまりない。こんなにもキャッチーで、これ以上ないほど「クリスマス」満載なのに... と思っていたところに、とうとう、新しい録音が登場した。名古屋フィルの常任指揮者に就任して、チャレンジングなプログラムを次々に繰り出し、俄然、注目のマエストロ、ティエリー・フィッシャーと、彼が首席指揮者を務める、BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団による、オネゲルの作品集(hyperion/CDA 67688)。

フランス6人組の一人、アルテュール・オネゲル(1892-1955)。というと、まず、交響的ムーヴメント(「パシフィック231」など... )のシリーズがあって、5つの交響曲、それから劇的オラトリオ『火刑台上のジャンヌ・ダルク』... そうした作品は、ちょくちょく聴く機会があるわけだが、このアルバムに収録されたオネゲル作品は、なかなか聴く機会の少ないものばかり、実に興味深い。
まず、1曲目、交響的黙劇「勝利のオラース」(track.1-9)。コルネイユの悲劇や、画家のダヴィッドも描いている、王政期のローマ、ホラティウス兄弟の物語を題材に、ナショナリスティックな性格もあるのか、力強く、ドラマティック。"交響的黙劇"というあたりが、映画音楽のようでもあり、雄弁... 初めて聴いたのだけれど、その質実剛健ぶりに、フランス6人組にして、そこから逸脱する独墺系のサウンドを咀嚼し取り込んだ、この作曲家、独自の魅力を再確認させられるよう。
2曲目、チェロ協奏曲(track.10-13)では、フォークロワな臭いも漂わせ、フランス6人組の真骨頂、擬古典主義的なステイルを思わせる。が、やはり響いてくるものはドイツ?カラフルなフランスとは違う、どこかモノトーンなモダンで、ヒンデミット的。3曲目、前奏曲、フーガとポストリュード(track.14-16)では、逆に瑞々しい表情が印象的で、どこかブリテン的?こういうオネゲルもあるのかと、新鮮だったり。
そして、その演奏だが、オネゲルの世界を的確に捉えて、きちっとしたフォルムを見せてくるのが印象的。フランス6人組にありながら、ワーグナーに共感し、よりロマンティックな性格を持ち得るオネゲルの音楽を、引き締めつつ適度に響かせるティエリー・フィッシャー。引き締まって見えてくる質実剛健さ、骨太なサウンドに、時折、スパイスのように漂うポップ感がまたたまらなく。BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団も好演し、一つ一つの作品が、しっかりと魅力的に響く。
また、クリスマス・カンタータでの声楽陣も健闘していて... クリスマスにちなむコーラルに、キャロルが、フランス語、ドイツ語、ラテン語で歌われ、複雑にコラージュされてくるメロディの数々を、しっかりとまとめて、またその複雑さを明晰に歌い上げる。ドイツのコーラスのような、透明感までは求められないが、BBCウェールズ・ナショナル合唱団のコーラスは、この作品の魅力を、十二分に引き出し、前半の曖昧模糊とした不安げな表情から、後半のクリスマスの楽しげな雰囲気、そして輝きに満ちたフィナーレへと、しっかりと導いてくれる。そこに、テュークスベリー寺院スコラ・カントルム、ディーン・クローズ・スクール室内合唱団によるこどもたちの歌声がなんとも愛らしく響き、まさに「クリスマス」。このアルバム、そんなクリスマス気分と、オネゲルの魅力を再確認するには、最良の一枚かもしれない。

HONEGGER UNE CANTATE DE NOËL ・ HORACE VICTORIEUX THE BBC NATIONAL ORCHESTRA AND CHORUS OF WALES / THIERRY FISCHER

オネゲル : 交響的黙劇 「勝利のオラース」 H.38
オネゲル : チェロ協奏曲 ハ長調 H.72 *
オネゲル : 前奏曲、フーガとポストリュード H.71a
オネゲル : クリスマス・カンタータ H.212 *

アルバン・ゲルハルト(チェロ) *
ジェイムズ・ラザフォード(バリトン) *
BBCウェールズ・ナショナル合唱団 *
テュークスベリー寺院スコラ・カントルム、ディーン・クローズ・スクール室内合唱団 *
ロバート・コート(オルガン) *
ティエリー・フィッシャー/BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団

hyperion/CDA 67688


クリスマス・カンタータは、オネゲルの最後(その死の2年前)の作品とのことだが... 死を前にして、キリストの生誕を歌う作品を書くとは、感慨深い。何より、どちらかと言えばヘヴィーなイメージのあるオネゲルが、最後、こういう、やさしく輝きに充ちた音楽(前半部は不安に充ちた表情の音楽だが... )を書いたことに、温かなものを感じてしまう。まさに「クリスマス」。なのかもしれない。




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