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"秘儀"バースデー。 [2008]

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2008年は、オリヴィエ・メシアン(1908-92)の生誕100年のメモリアルでもある。そして、12月10日(明日)こそ、100歳のバースデー!そうか、そうなのか... と、こちらとしましては、そんなスタンスなのだけど... CDの方は、とにかく盛り上がっている。メジャー/マイナー、こぞって、どこのレーベルも、もの凄い全集やら、シリーズやら、ボックスをリリース。改めてメシアンという作曲家の人気に、驚かされる。そんなに、人気があるの?いや、人気はある... 間違いなく... 録音が多いからこそ、全集やら、シリーズやら、ボックスに成り得るわけで、改めてフランス近代音楽の巨人の存在感に恐れ入る。
そうした中、"クラシック"アイコン、ウィーン・フィルが、近現代のスペシャリスト、インゴ・メッツマッハーを指揮者に、『彼方の閃光』(KAIROS/0012742KAI)をリリース。それが、現代音楽専門レーベル、KAIROSから... というから、メモリアルとはいえ、驚かされる。いや、これぞメモリアルの醍醐味!ということで、そんな1枚を聴いてみる。

実は、メシアン、なんとなく苦手な存在。なぜだろう?どこか掴みあぐねてしまうその音楽... 西洋音楽史の系譜に納まりきらない孤高の音楽観/感に、未だ対応できないような、追いつけないような。で、あたふたしてしまう。下手すると、音楽という枠組みすら逸脱していくような感覚もあって... メッツマッハー+ウィーン・フィルの演奏を聴いていると、さらにそんな印象を強める。
さて、ウィーン・フィル。まさにクラシカル(保守的)なオーケストラというイメージがあるわけだが、そうしたあたりから紡がれていくメシアンは、ちょっと尋常ではないものに変容していくようで、なかなか興味深い。機能性の高いオーケストラで、メシアンならではの鮮やかでより豊かな色彩感を、フル・ハイヴィジョンで描き上げる。のとは違うメシアン... 暗闇の中、西洋の美意識とは異なる色彩を伴って、ぼんやりと浮かび上がり、やがてグロテスクに光り出すような、神秘主義全開の演奏... というより、まるで何かの"秘儀"。音楽というよりは、儀式そのもののように響く。
非ヨーロッパ文化に大きな関心を抱いた20世紀フランスの色彩感(アフリカのプリミティヴな造形、ガムランのサイケデリックさ、などなど... )に、ウィーン世紀末(?)の翳が忍び寄るようなサウンド。すると、何か、得体の知れないものがとぐろを巻き、聴く者を睨みつけるようで、薄ら恐い。
『彼方の閃光』は、メシアンが完成させた最後のオーケストラ作品だが、これが、フランス近代音楽の巨人が到達した音なのか?メッツマッハー+ウィーン・フィルの演奏で聴くと、まるで「近代」の対岸にあるサウンド... そんな印象。それは強烈。何ともプリミティヴ。カトリックへの帰依を深めていったメシアンだけに、この作品も、キリストについての音楽であるはずだが、まったく想像がつかない。が、そんな得体の知れないものに創り上げてしまうメッツマッハーのセンスに関心が...
「近現代のスペシャリスト」という肩書は、明快にして解明な音楽を創り上げていくイメージがあるが、この人のセンスは、必ずしもそうはならないあたりがおもしろい。何より、ウィーン・フィルという素材を、そのまま活かして、いや、さらに化けさせて、西洋音楽という場所で仕事をさせない離れ業?西洋音楽史の系譜から解脱してしまったメシアン像の不可解さは、凄い。そして、その凄さに、あたふたしてしまう。これは、音楽なのだろうか?全編、何かの呪文のようにすら聴こる。
が、その最後は、一転、美しい響きが広がる。それまでの、"秘儀"から解放された安堵感が広がる。何より、「キリスト、楽園の光」(track.11)というタイトルの通りの響き... まさに楽園のイメージ。光がキラキラしている。しかし、メッツマッハー+ウィーン・フィルの演奏を、よくよく聴いてみると、この楽園も、どこか怪しげな気分が漂い。ウィーン・フィルならでは(?)の弦楽セクションの、なんとも言えないヴィブラートが、楽園を怪しく揺らめかせ、蜃気楼のよう。幻惑させられて、最後まで、ドキドキさせられる。

OLIVIER MESSIAEN Éclairs sur l'Au-Delá...

メシアン : 『彼方の閃光』

インゴ・メッツマッハー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

KAIROS/0012742KAI




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