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ドレスデン・エクスペリメント。 [2008]

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着実に"クラシック"の階段を昇って、ドレスデンのピッグ・ポストに就いたファビオ・ルイジ。これまで聴いてきた、この偉才が紡ぎ出すただならない音楽と、「シュターツカペレ・ドレスデン」というブランドが生み出すサウンドには、期待せずにはいられない... そして、これまで、リヒャルト・シュトラウスのアルバムが、2タイトル、リリースされたわけだが、最新盤はブルックナーの9番の交響曲(SONY CLASSICAL/88697299642)ということで、どんな響きがするのだろうと、ワクワクして待ち構えていたのだが... ウーン。

昨シーズンから、ザクセン州立歌劇場(ゼンパー・オーパー)の音楽監督、そのオーケストラ、シュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者に就任したファビオ・ルイジ(b.1959)。テンションを保って、しっかりとドラマを練り上げるオペラでの仕事ぶり。独特の感性で、ナチュラルに音楽を編み上げていくオーケストラでの仕事ぶり。どちらにおいても稀有な才能を聴かせ、21世紀、次の時代の「巨匠」はこの人か?と、そこはかとなしに印象付けてくるわけだが、ブルックナーの最新盤では、こちらの期待が大き過ぎたのか、その第一印象は、少しガッカリ。ルイジ+シュターツカペレ・ドレスデンの演奏を聴いていると、ブルックナーに感じる執拗さというのか、時としてうるささのようなものが耳につき、克服されたはずのブルックナー嫌いが、込み上げてくる。

ブルックナーの交響曲というのは、音楽の結晶のようなイメージ(ある種、ミニマルであり、現代性すら感じて... )がある。そこには、「人生」とか、「感情」とか、人間臭さのようなものが入り込む隙のない、超然とした姿があって。ブルックナー嫌いが克服された今では、そうした姿を前にすると、ただただ圧倒されるばかり。なかなか、他の作曲家では体験し得ないものがある。が、それを人間が奏でるわけで、音楽の結晶に至るには、なかなか難しいのかもしれない。ルイジによるブルックナーは、どうも曇る。時折、濁るようなところも。結晶のきらめきを、なかなか見出せずにいた... ということで、そんな第一印象を拭おうと、せっかくの最新盤を、机の端に放置してみる... 時として、時が解決することもあるだろうと... 熟成は"クラシック"の妙... って、音が変わったりはしませんけど...
で、改めて聴いてみる、ルイジ+シュターツカペレ・ドレスデンのブルックナー。
やはり、"音楽史"そのものを語れてしまうようなシュターツカペレ・ドレスデンの歴史と伝統に、ルイジが押され気味の印象も。ルイジならではの魔法は、まだこのオーケストラには掛かっていないのかもしれない。また、相当な魔力でなくては、この歴史と伝統には太刀打ちできないのかもしれない。何より、新たなリレーションシップがスタートして、ちょうど2シーズン目。いろいろ期待するのは早いのかなと。一方で、シュターツカペレ・ドレスデンによるサウンドというのは、重厚で、宮廷オーケストラとして培ってきたものなのか、独特の優雅さが漂う。それは、なんとも"クラシカル"で、ところどころ、その芳醇さに酔わされる。そんな"クラシック"としての魅力が、濃厚に詰まったあたりから繰り出されるブルックナーというのは、かえって、新たなイメージがあるようでもあり... ルイジの狙いは、そこにあったのか?
音楽の結晶に、あえて人間臭さを持ち込んでいるような... ワーグナーの影響を大いに受けたブルックナーではあるが、ルイジは、よりワーグナーの楽劇に近づくような感覚があって、『指環』のような大河ドラマが、"交響曲"に落し込まれているよう。すると、終楽章(track.3)に至っては、マーラーのような臭いすらしてきて... 未完に終わった9番の性格も、どことなくマーラーに近づき得る可能性を秘めているのかもしれない。そして、どことなしにアイロニカルな気分もあって、独特な薫りが漂い、気がつけば、すっかり浸っている。そういう不思議さは、やはりルイジの魔法か。結晶を、ドラマとして捉え直そうとする... 後半に入って、そういう演奏志向を感じることができて、興味深く感じる。
が、そうしたものが、はっきりと見えてこないもどかしさもあり... そこに、可能性があるならば、ルイジ+シュターツカペレ・ドレスデンによるリレーションシップがさらに熟成された時に、改めてこのブルックナーの9番を聴いてみたい。

ANTON BRUCKNER SYMPHONIE NR.9 D-MOLL STAATSKAPELLE DRESDEN FABIO LUISI

ブルックナー : 交響曲 第9番 ニ短調

ファビオ・ルイジ/シュターツカペレ・ドレスデン

SONY CLASSICAL/88697299642




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サンフランシスコ人

(サンフランシスコで)シュターツカペレ・ドレスデンの演奏会に一度だけ行きました....
by サンフランシスコ人 (2016-01-29 03:33) 

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