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新たなる革命的、ロマンティシズムによるブラームス、始まる。 [2008]

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バッハのカンタータにシフトしていたガーディナーが、ブラームスの交響曲のシリーズを始める?!
そして、久々のオルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティクでのリリースで...
ガーディナー+オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティク(ORR)名義での録音は、ウェーバーのオペラ『オベロン』(PHILIPS/4756563)以来か。いや、この組合せを待っておりました。何より、ブラームスを取り上げるというのだから、期待せずにはいられない。ベートーヴェンに始まり、ベルリオーズ、シューマンと、レヴォリューションとロマンティシズムの時代、専用のオーケストラを編成して、果敢に19世紀へと斬り込んでいった開拓者、ガーディナーのブラームスだ。ドイツ・レクイエムは録音されていたが、やはり、その交響曲が聴いてみたかった。で、シリーズ第一弾は、1番の交響曲(Soli Deo Gloria/SDG 702)を... また、ブラームスを録音するにあたり、ブラームスに影響を与えた作曲家も含めてのシリーズになるとのこと。第一弾では、メンデルスゾーンの合唱曲なども収録され、実に興味深い1枚に。

ということで、1番の交響曲の前に、3つの合唱曲が収録されていて... ブラームスの「埋葬の歌」、「運命の歌」、この2曲の間に、メンデスルゾーンの「われら、人生のただ中にありて」も、モンテヴェルディ合唱団により歌われる。のだが、1曲目、シリーズを開始する曲が「埋葬の歌」とは、狙いがあるのか?深読みし過ぎか?なんていろいろ考えてしまう。しかし、インパクトのある作品だ。ブラスとティンパニーによる伴奏が、まさに埋葬の音楽の雰囲気を盛り上げ... 恐ろしく重々しい。が、実にエモーショナルでもあって... さらに、モンテヴェルディ合唱団による圧倒的な迫力があって...
そこに、無伴奏で歌われる、メンデルスゾーンの「われら、人生のただ中にありて」(track.2)を聴くと、ガーディナーの思惑に頷けるというか、ブラームスの音楽と、メンデルスゾーンの音楽のつながりを、より感じて、興味深く。また、無伴奏の、無伴奏だからこその力強さが、ブラームスの濃密な音楽の後、際立っていて。モンテヴェルディ合唱団の、クリアなばかりでない、エモーショナルな部分が、作品に峻厳な存在感を与えて、とても印象深い。その峻厳さの後に響き出す、ブラームスの「運命の歌」(track.3)の、オーケストラによる、やさしく、甘い序奏の、「ロマンティック」には、ヤラれる。なんと、美しいことか... と、このアルバムの"序"の部分で、すでに大満足。さすがはモンテヴェルディ合唱団。
で、もちろんメインは1番の交響曲。その1楽章(track.4)、冒頭の、力強く打ち鳴らされるティンパニー、うねる弦、ブラスの咆哮と、何やら黙示録的な様相に、ガーディナーの新しいシリーズへの覚悟というのか、気迫が伝わって。また、その様子に、久々に聴くガーディナー+ORRの、音楽へのスタンスの変化を見るよう。彼らの演奏には、オリジナル主義ならではの、明晰にして精緻な演奏... そうしたイメージを持っていたが、ここでは、スコアに対するオリジナル主義を越えて、スコアに籠められた感情や、その背景たる時代の空気感まで、盛り込まれているようで。「ロマン主義」の熱っぽい温度が伝わって、「明晰」、「精緻」ばかりでない、彼らの"オリジナル"への視点を、もう一つ進化させたようにも感じ、新鮮に、そして興味深く聴く。
特に印象的なのが、ポルタメントの多様。もちろんノン・ヴィブラートで... そこからポルタメントをかけていくと、おもしろい響きが生まれてくる。が、なかなかスリリングでもある。妙なところへと陥ってしまわないよう、バランスを保つことが難しい試みのようにも聴き取れて、それでも挑む、ガーディナーの攻めの姿勢が凄い。が、そのガーディナーの意図を、形にしていくORRの弦セクションの面々も大したもので。2楽章(track.5)の、甘く、夢見るようなメロディで、そうしたポルタメントが巧くはまってくると、まるでマーラーの交響曲のようにも聴こえてきて... ブラームスの、過去と同時代とのつながりを探るガーディナーのシリーズではあるが、その先すらも見えてきそうだ。
それにしても、腕利き揃いのORR。その演奏はすばらしく。ガーディナーのヴィジョンを、けしてエキセントリックなものとせず、明確に形にして、音楽として魅力的に響かせて。そうして盛り上げられていく終楽章(track.7)の、極自然に紡がれていく感動は、とても印象的。十分にエモーショナルでありながら、ロマンティシズムが管を巻くことなくナチュラルに表現されて、ORRの器用さならではの感覚が、ブラームスの1番の交響曲という希代の名曲に、また一味違うスタイルを見出す。そして、ガーディナー+ORRが、次に聴かせてくれる、新たなる革命的、ロマンティシズムによるブラームスが、大いに気になる。

Brahms Symphony 1 Gardiner

ブラームス : 「埋葬の歌」 Op.13 *
メンデルスゾーン : 『教会音楽』 Op.23 から 「われら、人生のただ中にありて」 *
ブラームス : 「運命の歌」 Op.54 *
ブラームス : 交響曲 第1番 ハ短調 Op.68

モンテヴェルディ合唱団 *
ジョン・エリオット・ガーディナー/オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティク

Soli Deo Gloria/SDG 702




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