SSブログ

ツィゴイネルワイゼン、ヨーロッパに底流するもうひとつの感性... [before 2005]

4645312.jpg
えーっと、ちょっと新譜から離れまして... 旧譜から、今年、没後100年のメモリアルを迎えるサラサーテを聴いてみようかなと... そう、あのツィゴイネルワイゼン!誰でも、どこかで、一度は耳にしているであろう、コッテコテの名旋律。けど、一曲としては、どんなだっけか?いや、待てよ、よくよく考えてみると、コンサートで聴いたことはないし、CDも無かったはず... つまり、ちゃんと聴いたことがないという驚くべき事実に直面。それは、「超有名曲」という落とし穴?マニアックな方にばかり気を取られていると、こういうことになるのか... ちょっと反省しつつ、今さらながらに興味津々。ということで、ツィゴイネルワイゼンを収録したアルバムを手に取ってみた。
イヴァン・フィッシャー率いる、ブダペスト祝祭管弦楽団の演奏、諏訪内晶子のヴァイオリンで、サラサーテのツィゴイネルワイゼン!それに、カルメン幻想曲と、ドヴォルザークのマズレック、ヴァイオリン協奏曲というカップリング(PHILIPS/464 531-2)で聴く。

パプロ・デ・サラサーテ(1844-1908)。
スペイン、バスク地方(つまり、バスク人... )、パンプローナで、軍楽隊長の息子として生まれたサラサーテ。父親の手ほどきでヴァイオリンを学び始めると、瞬く間に才能を開花。8歳にして初めてのコンサートを開いたというから、まさに、神童!女王陛下(スペイン女王、イザベル2世)の御前でも演奏し、その女王の支援もあって、12歳でパリのコンセルヴァトワールへ留学(1856)。1860年には、パリでデビュー。以後、アメリカ、イギリス、ウィーンと、ヴァイオリンのヴィルトゥオーゾとして世界を股に掛けて大活躍。また、そのすばらしい演奏が多くの作曲家に霊感を与え、サン・サーンスの序奏とロンド・カプリチオーソ(1863)、ラロのスペイン交響曲(1874)など、ヴァイオリニストにとって欠かせないレパートリーが生み出され、自身もツィゴイネルワイゼンに代表されるヴァイオリンの人気作を残し、作曲家としても足跡を残す。そして、今からちょうど100年前の1908年、スペイン国境に近い、フランスの大西洋岸、高級リゾートとして知られるビアリッツで、64歳の生涯を閉じた。
という、没後100年のメモリアルに聴く、サラサーテの代表作、ツィゴイネルワイゼン。サラサーテのヴィルトゥオージティを如何なく発揮した、あのコッテコテな名旋律を、クールな諏訪内さんが取り上げたなら、コッテコテも薄まるか?ぐらいの気持ちで聴き始めたのだけれど... お約束の冒頭のメロディこそコッテコテでも、全体を聴けば、でもない?これまで、ちょっとイメージを膨らませ過ぎたか... いやいや、後半、アップテンポでノってくれば、ツィゴイナーな魅力がキラキラして、魅惑的!また、そのヴィルトゥオージティに溢れる音楽を、クールな諏訪内さんの、しれーっと繰り広げられる超絶技巧が、さり気なくカッコいい... というあたりが、凄い!続く、カルメン幻想曲(track.2)なんて、もはや難曲に聴こえないし... いや、大変な難曲なのだけれど... 難曲なればこそのスリリングさが聴こえて来ない。そのテクニック、作品を凌駕してしまって、クール過ぎるのかも...
そんなサラサーテの後で、ドヴォルザークのマズレック(track.3)と、ヴァイオリン協奏曲(track.4-6)が取り上げられるのだけれど、こちらはホット!国民楽派を得意とするイヴァン・フィッシャー+ブダペスト祝祭管の伴奏が絶妙に効いて、彼らならではのフォークロワなテイストが、音楽を芯から温める。すると、諏訪内さんも、気負うことなく、その流れに乗り、クールなばかりでない、情感豊かな音色を聴かせれば、国民楽派、ドヴォルザークの、民衆に根ざしたサウンドの人懐っこさ、力強さが増して、パぁっと輝き出す。このエスニックさは、思いの外、魅力的。というより、こんなにもいい曲だった?いや、ドヴォルザークの名曲、チェロ協奏曲に負けてない!という充実に、作曲家、ドヴォルザークの、ヴィルトゥオーゾ、サラサーテとの音楽との向き合い方の違いがより明確になって、おもしろい。ヴァイオリンに仕える音楽(サラサーテ)と、音楽に仕えるヴァイオリンとオーケストラ(ドヴォルザーク)... このコントラストがまたアルバムに推進力を与えて、単に諏訪内さんを聴くだけでない広がりを聴かせてくれるのか。サラサーテとドヴォルザークという、ちょっと無いようなカップリングが、新鮮!
それにしても、なぜサラサーテとドヴォルザークなのか?不思議に思ったのだけれど、3曲目、ドヴォルザークのマズレック(track.3)は、サラサーテに献呈された作品とのこと... そうか、これで前半(サラサーテ)と後半(ドヴォルザーク)がつながる。でもって、そのマズレックのキャッチーなメロディーは、クレズマー(東欧系ユダヤ人、アシュケナジウムの人々による音楽... )を思わせる人懐っこさがあって。続く、ドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲も、終楽章(track.6)の中間部でクレズマーのような物悲しさが立ち込めて。中東欧のフォークロワの、クレズマーとの親和性を思わずにいられない。で、前半のツィゴイネルワイゼン(「ジプシーの旋律」の意味... )に、カルメン(オペラでジプシーと言えば、この人!)を考えれば、このアルバムからは、ヨーロッパに底流する土に根差しもうひとつの感性が浮かび上がる?エスニックでありながらも、これもまたヨーロッパ... そんな、クールな諏訪内さんの、ディープな指向に、魅入ってしまう。

DVOŘÁK: VIOLIN CONCERTO, etc.
SUWANAI ・ BUDAPEST FESTIVAL ORCHESTRA/FISCHER


サラサーテ : ツィゴイネルワイゼン Op.20
サラサーテ : カルメン幻想曲 Op.25
ドヴォルザーク : マズルカ Op.49
ドヴォルザーク : ヴァイオリン協奏曲 イ短調 Op.53

諏訪内晶子(ヴァイオリン)
イヴァン・フィッシャー/ブダペスト祝祭管弦楽団

PHILIPS/464 531-2




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。