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ショパンの可能性... [2008]

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ショパンの家元(?)、ポーランド、国立ショパン協会が、ショパンの生きた、その当時の楽器(なんでも、ショパンが愛用した楽器なのだとか... )を使って、ショパンの全てを録音するという、壮大なプロジェクトがスタート(生誕200年のメモリアル、2010年を目指して... )。というから、驚いた!ショパンの新たな全集が、ピリオド・アプローチで誕生することになるのだから... 凄い... いや、凄過ぎる!時代は変わったのだ!
で、その第1弾に、早くも2つのコンチェルトが登場。1980年、ショパン・コンクール優勝、アジアに初の優勝をもたらしたベトナム出身のマエストロ、ダン・タイ・ソンが、1849年製のエラールのピアノを弾く... 伴奏には、フランス・ブリュッヘン率いる18世紀オーケストラ!という、ショパンの1番と2番のピアノ協奏曲(Narodwy Instytut Fryderyka Chopina/NIFCCD 004)を聴く。

1番(track.1-3)の、オーケストラによる、あの、やたら長い序奏... いつももどかくし思っていたのだけれど、驚いた!ピリオドのオーケストラとは思えないような、たっぷりと滴るような聴き応え満点の出だし... いや、モダンのオーケストラでも聴いたことがない、この感覚... この定番コンチェルトのイメージを、根底から覆しかねないような、予想外のサウンドに、ピアノが鳴り出す前から、すっかり魅了されてしまう。それにしても、なんと端正で雄大な!まるでベートーヴェンのように響くショパン... それは、序奏だけでなく、曲全体で、2番(track.4-6)も含めて、ある意味、圧倒的。近頃、ブリュッヘン+18世紀管のリリースが無かっただけに、充実感に溢れるそのサウンドに、彼らを再発見するようであり、いや、改めての脱帽。その、ヴィルトゥオーゾの伴奏に過ぎず... というような、安直な仕事なんてあり得ない心意気に、ショパンのスコアすら喜んでいるよう... 明らかに、いつもと違って聴こえてくる部分もあり(スコアも改訂された?)、発見もありつつ、肝心のピアノを前に、聴き入ってしまう。
そして、ダン・タイ・ソンのピアノが響き出す。1849年製、エラールのピアノの、モダンのピアノとは明らかに異なる枯れた味わい。その、枯れた分、響きが軽くなって、全てが心地良く流れて行く新鮮さ。下手に感情に溺れる余地のないピリオドのピアノの癖を、絶妙に活かす!が、そうして奏でられるショパンは、より情感が深くなるようでもあり、よりセンチメンタルの色合いを濃くするからおもしろい。1番の2楽章(track.2)など、この梅雨の時期に、より心に響いてくる感覚もあって。残響の少ないピアノだからこその、点描の様な響きが美しく、そこから生まれる透明感がたまらず。この透明感が生む瑞々しさが、ショパン本来の響きだったのかと、感慨も。
楽器の制約もあるわけだけれど、過剰にならず、抑えた中に、繊細な心の動きを追うようなダン・タイ・ソンのピアノ。それは、この人ならではのテイストというのか... ブリュッヘン+18世紀管が創り出す、大河のようなドラマの背景に、実に映えて。かの有名な2つのコンチェルトから、これまでに聴いたことのない、純度の高いドラマと、洗練された音楽が流れ出す。しかし、「ショパン」って、こうだった?ポーランドの土の臭いがして、ドロりとメランコリックで。しかし、踏み込んでみると意外に浅い音楽というのか... 正直、苦手。だったが、そういう意識は、あっけなく崩れ去る。これまでも、ピリオドでのショパンは、無くは無かったのだけれど、このアルバムの演奏は、何かひとつ突き抜けたものがあって。モダンはもちろん、他では味わうことのできない感覚が、秘められた美しさを、詳らかとする。今さらながらだけれど、ショパンの可能性を強く感じさせてくれる。いや、これを機会に、ピリオドでのショパン、さらに盛んになれば... の前に、国立ショパン協会の全集、今後が楽しみ!

Chopin Piano Concertos No.1&2 Dang Thai Son / Frans Brüggen

ショパン : ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11
ショパン : ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 Op.21

ダン・タイ・ソン(ピアノ : 1849年製、エラール)
フランス・ブリュッヘン/18世紀オーケストラ

Narodwy Instytut Fryderyka Chopina/NIFCCD 004




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