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ロック・ヒロイック。 [2008]

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OEHMS CLASSICSから、突如、飛び出した、イタリア・ピリオド界の革命児、アントニーニの指揮、モダンとピリオドのハイブリット... 場合によっては完全にピリオド仕様にもなる、スイス切っての気鋭の室内オーケストラ、バーゼル室内管弦楽団による、ベートーヴェンの交響曲、1番と2番(OEHMS CLASSICS/OC 605)。ヴィヴァルディの『四季』で伝説を作った、イル・ジャルディーノ・アルモニコを率いるアントニーニが、とうとうベートーヴェンに... そして、ベートーヴェンを振ると、こうなるか... という仕上がり。いや、想像通り。あのベートーヴェンも、ここまでなるか!と、そのアンファン・テリブルぶりで、大いに沸かせてから2年半。ただならぬ刺激に充ちた1番と2番を聴かされ、次も、その次も、大いに期待せずにはいられなかったのだが、なかなか次がリリースされない。ツィクルスにはならない?と、ヤキモキしていたところに、SONY CLASSICALから続編が!
ジョヴァンニ・アントニーニの指揮、バーゼル室内管弦楽団による、ベートーヴェンの3番、「英雄」と、4番の交響曲(SONY CLASSICAL/88697192522)を聴く。

さて、アントニーニ、バーゼル室内管によるベートーヴェン... 前作に比べると、わずかに勢いを失ったか?いや、こう、微妙に洗練されてしまったのか?周りの目など、気にせず、臆さず、ヤリ過ぎにして、ヤリ切ってしまうあたりが、彼らの魅力だと思ったのだけれど。1番、2番と来て、ピリオド界切ってのアンファン・テリブルも、それなりに成長を見せているのか?ならば、それはそれで、収穫なのだろう。しかし、どこか腑に落ちない... ピリオド・アプローチの流れを変えた革命児が、何となく、クラシックの奔流に吸い寄せられてしまったような、3番と、4番。あの1番と、2番を思い出しつつ聴いてみると、その第一印象は、少しガッカリ...
ベートーヴェンとはいえ、未だ、18世紀の流れの内にある古典派の枠から逸脱することのない1番と、2番。古典派的端正さを前に、アントニーニも、おもいっきり暴れようがあったのだろう。しかし、3番ともなると、すでにベートーヴェンのオリジナリティは開花し、作品そのものが個性を持ち、場合によっては灰汁の強さのようなものも放っている。となると、アンファン・テリブルがどんなに暴れても、それらを吸収してしまうほど、3番は、個性的に、揺るぎない存在感を示す。まさに、音楽史における、稀代の「英雄」... 1番、2番とは、若干、様子が変わって来るアントニーニの3番(disc.1, track.1-4)に触れて、改めて「英雄」の凄まじさを感じたり。しかし、アントニーニも必死で暴れ返す。ピリオド界という、ある種、"トンデモ"の世界(と見られがちな... )を掻き回して来た革命児、21世紀を生きるアントニーニと、脈々と続く音楽史における偉大なる革命家、19世紀を生きたベートーヴェン。器の違い、時代を大きく隔てながらも、両者には、生々しいバトルが繰り広げられるようでもあり。両者のそのせめぎ合いが、あちこちでスパークし始め、前作、1番と、2番とはまた一味違うおもしろさがあるように感じる。
そんなバトルを経て、やがて、アントニーニのヤリ過ぎと、ベートーヴェンのヤリ過ぎが共鳴し合い... 例えば、2楽章の葬送行進曲(disc.1, track.2)の盛り上がりなどは、派手に響き渡るブラスに、いい具合にチープさが現れて。こうしたヤリ過ぎが、クラシックの、アカデミックでスノッブな気分を見事に蹴散らして、21世紀に、ベートーヴェンのカッコ良さ、19世紀初頭の"ロック"感をアピールする。もはや、クラシックではなく、ある種、エンターテイメントなのかもしれない。一方、4番(disc.2, track.1-4)は、やや古典派に立ち帰るような端正さがあって、そのあたりに、再び、アントニーニに暴れる余地ができるのか... アントニーニならではのバロック・ロックなテンションが隅々まで行き渡り、「英雄」以上に刺激的な部分もあり、胸すく演奏を展開してくれる。
そんな、アントニーニの暴れっぷりをしっかり形にする、バーゼル室内管が凄い!ヤリ過ぎを、ヤリ切るということは、なかなか難しいことだと思う。オーケストラの美しい響き... 軽妙洒脱なアンサンブル... など、あり得ない、ただただ荒ぶる演奏だ。20世紀的なクラシックの美意識に引き摺られていては、絶対に形になどできないだろう。それでいて、ヤリ過ぎを、ヤリ切るというのは、甘さや弛緩することを、まったく許されないわけで、アントニーニに応えられるだけの技量がなければ、演奏として成り立ち得ない。さらには、彼らも、アントニーニに、ベートーヴェンにすら、バトルを挑んでいて... 生半可でない気迫というのか、他のオーケストラにはあり得ないものが、このオーケストラには満ち充ちている。前作もそうだったが、彼らの演奏には、風圧すら感じてしまうような、強烈なパワーが籠められ、薄ら恐くなる。アントニーニもアントニーニだが、バーゼル室内管もバーゼル室内管だ。だからこそ、おもしろい、3番と、4番なのだろう。

GIOVANNI ANTONINI Kammerorchester Basel BEETHOVEN Symphonies 3 & 4

ベートーヴェン : 交響曲 第3番 変ホ長調 Op.55 「英雄」
ベートーヴェン : 交響曲 第4番 変ロ長調 Op.60

ジョヴァンニ・アントニーニ/バーゼル室内管弦楽団

SONY CLASSICAL/88697192522





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