SSブログ

競演、ハンガリー風に... [2008]

5021092.jpgVandE.jpg
1010.gif
ヴァイオリンのための協奏曲の、傑作であるブラームスのヴァイオリン協奏曲。この協奏曲が誕生する過程には、ハンガリーが生んだ偉大なヴィルトゥオーゾ、その時代を代表するヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒム(1830-1907)の大きな存在が... ブラームスとヨアヒム、二人の音楽家の友情が紡ぎ出した、コラヴォレーションとも... ヨアヒムのヴァイオリン、ブラームスの指揮で、初演され... 作品はヨアヒムに献呈され...
そういう話しは、これまで、なんとなく聞かされてきたわけだが、テツラフ(ヴァイオリン)によるアルバム(Virgin CLASSICS/502109 2)には、ブラームスのみならず、そのヨアヒムのヴァイオリン協奏曲までが取り上げられていて、まさに21世紀流のチョイス... 音楽史を代表する作曲家と、時代を代表するヴァイオリニスト。さらには、二人のヴァイオリン協奏曲が、ともにハンガリー風。となると、これは、なかなか興味深く...
さて、ブラームスは、すでにいろいろ聴いているわけでして、気になるのは、2曲目、ヨアヒムの2番のヴァイオリン協奏曲「ハンガリー風に」。

これまでの、多少お堅い「音楽史」の枠の外に置かれ、分の悪い扱いを受けてきた、19世紀を賑わせたヴィルトゥオージティ溢れる作品の数々。が、お堅い「音楽史」にもほころびが見え始めれば、その魅力の再認識も進む今日この頃。聴き慣れたブラームスとは違い、ヨアヒムのコンチェルトは、予想通りのヴィルトゥオージティで溢れ、魅了してくれて、新鮮。はじまりから、ハンガリーの平原に、霧が深く立ち込めるようで、なにやら思わせぶりなドラマティックの兆し... で、霧が晴れれば、ロマンティックど真ん中のドラマティック!二楽章、哀愁が立ち込めて、切なげに歌うヴァイオリンのメロディは、バルカン半島特有の匂いに包まれて、美しくロマンティックに、ローカル色に染まっていくあたりが魅力的。さらに、終楽章の、臆することなく、ダイレクトに表現されたジプシー風のメロディ(まさに、ラカトシュ的な!)の炸裂!マジャールの馬が、疾駆していくようで、エキサイティング!それが、フィナーレに向けて、どんどん盛り上がり、最後は圧巻!これぞ、ヴィルトゥオーゾ・コンチェルト!といった醍醐味がある。
そのヨアヒムを聴いて、ブラームスを聴き直すと... ブラームスのコンチェルトがよく練られ、しっかりとできていることを思い知らされる。が、ヨアヒムの、まさにコンサート映えするであろう、ヴィルトゥオージティ溢れる作品を聴いてしまうと、どこか、お堅い。これまで、終楽章などは、十分に砕けている... と、感じていたが、ヨアヒムの熱狂に比べれば、実に真面目。それは、まったく端正。けして、ブラームスがつまらないわけではないのだが、ヨアヒムと並べてしまうと、そのギャップが興味深く。アポロとデュオニュソス、そんな対照を思い浮かべたり。
シンフォニックに構築し、ハンガリーのテイストを最後で匂わす。一方で、ハンガリー尽くしのやり過ぎ感も、多様な21世紀の感覚の下に曝してしまえば、それはそれで十分にクール!19世紀とは、実に幅のある時代であったのだなと、妙に感心し、また、これだけの幅を、その時代のオーディエンスは楽しんでいたわけで、お堅い「音楽史」というフィルター越しに、クラシックを捉えがちな我々は、どこか損をしているのかもしれない...

さて、演奏の方だが、テツラフのヴァイオリンは、よりヴァイオリニストの方に共鳴するようで、ブラームスよりも、ヨアヒムの方が好印象。技巧的なあたりも難なくこなして、自由に羽ばたいて見せつつ、絶妙なバランス感覚で、B級路線に肥大していくことを避け、グラマラスな魅力を巧みに抽出し、酔わせてくれる。が、ブラームスでは、多少、力むような印象もあり。また、ツワモノ、ダウスゴー率いるデンマーク国立響を前に、多少、押され気味でもあり。ヴァイオリニストが羽ばたきやすいヨアヒムの向こうで、シンフォニスト・ブラームスの難しさみたいなものも、改めて感じたりもする。
一方で、オーケストラの、シンフォニックでアグレッシヴなあたりは、ブラームスですばらしく。何より、ダウスゴーが作り出す音というのが、やっぱり独特で。濃密なのだけれど、透明感に欠けることはなく... なんというか、透明なジェル状?それでもって、時に、テツラフを飲み込んでしまいそうで、ハラハラさせられもし... 単なる"伴奏"なんて、甘い態度を微塵も見せないダウスゴー、そしてデンマーク国立響。その潔さは、またそれでクールなサウンドを引き出しており。ソリストが押され気味なのも、ブラームスならではの事態なのやも?

Brahms - Joachim: VIOLIN CONCERTOS CHRISTIAN TETZLAFF / THOMAS DAUSGAARD

ブラームス : ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77
ヨアヒム : ヴァイオリン協奏曲 第2番 ニ短調 Op.11

クリスティアン・テツラフ(ヴァイオリン)
トマス・ダウスゴー/デンマーク国立交響楽団

Virgin CLASSICS/502109 2




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。