SSブログ

ブラヴーラな時代の、ブラヴーラな面々... [2008]

3952502.jpg
ブラヴーラ... 技巧的に非常に難しい事、またはそれを克服すること...
何となく耳にしていた単語の、きちんとした意味を知ると、感じ方が少し変わってくるのかも。ということで、聴いてみる、ブラヴーラの時代(18世紀後半... )の、ブラヴーラを惜しみなく盛り付けた面々(古典派の頃のオペラの最盛期を担った作曲家たち... )による、ブラヴーラなアリアの数々。サリエリ(モーツァルトよりも6つ年上、『アマデウス』で知られる通りの、彼のライバル... )、リギーニ(モーツァルトとは同い年、サリエリと同じイタリアの出身、ウィーンを中心に歌手として、作曲家として活躍。後にベルリンへと移る... )、そして、お馴染みモーツァルト、というウィーンの古典主義を彩った3人による、アクロバティックにして華麗なるコロラトゥーラ三昧!
近頃、評判のソプラノ。ということで、あちらこちらで目にするその名前... ディアナ・ダムラウの、Virgin CLASSICSからの第一弾アルバム。フランス・ピリオド界の新世代、ジェレミー・ローレル率いる、若き才能を結集した新たなピリオド・オーケストラ、ル・セルクル・ドゥ・ラルモニの演奏で、ブラヴーラに歌う、"ARIE DI BRAVURA"(Virgin CLASSICS/395250 2)を聴く。

"今時のソプラノ"的なチョイスというのか、もはや、モーツァルトだけでは済まないのが、"21世紀クラシック"の流儀。少し前ならば、どれも似たような... と、モーツァルトという大看板一枚で、ばっさり切り捨てられていた古典派の時代。が、20世紀後半に創り上げられたクラシックのステレオ・タイプが崩壊し始めている中(まったく、そういう気配を感じない極東の島国もあるが... )、ブラヴーラな時代は、知られざるお宝の宝庫?そんなダムラウ・チョイスのお宝の数々、"ARIE DI BRAVURA"。もちろん、時代のモードの枠から逸脱するようなことはない。18世紀後半のサウンドを想像して、その通りのサウンド(そのあたりが、どれも似たような... と、取られてしまうのかもしれない... )。である。が、ひとつひとつが、明らかに美しい。そして、サリエリ、リギーニが、モーツァルトより聴き劣りする... などということも、まったくない。いや、当時のオペラ・シーンの、作曲家たちが凌ぎを削ったサバイバルが見えてきそうで。充実のラインナップ!何より、ブラヴーラの輝かしいこと!
始まりのサリエリのオペラ、『クビライ、タタールの大汗』からのアリアの、晴れ渡る空を突き抜けてゆくような爽快な歌声からして、もう、ワクワクしてしまう。この明瞭なるスキっとした感覚こそ、古典派の時代!バロックの頃の超絶技巧とは一線を画す、端正なメロディ・ラインに、ここぞというところで、最高の装飾を見せて、煌めく感覚が、ブラヴーラの時代の魅力だなと... 続く、リギーニのカンタータからのアリア(track.2)は、静かな、時折、不安げな表情が滲んで始まり、そこから、じっくりと盛り上げて、華麗にブラヴーラが舞って締めるという、この山登り感が最高!ブラヴーラなアリアは、大見得を切るシーンであって、ドラマが盛り上がって、歌う側も聴く側も、テンションが最高潮となっての、まさに山場。けれど、どんなにドラマティックになろうとも、美しさは失わないのが、古典美の粋を極めたブラヴーラ。傷ひとつ許さない、磨き抜かれたその姿というのは、他の時代のアリアには無い、極まった悦びがある。ブラヴーラが、喜怒哀楽、様々な感情を取り込み、音に形を与え、それが驚くべき超絶技巧となって... またそれを、見事に歌い切られた時の快感たるや... もはや、何の説明もいらない...
それを実現し得ている、ダムラウ、恐るべし!とにかく、ブラヴーラが決まってゆく様、技巧的に非常に難しい... あたりが克服されてゆくカタルシスというのは、やっぱり凄い。凄い一方で、技巧的に非常に難しい... アリアが、軽々と歌われてしまう様子が、あまりに突き抜けていて、思わず、笑ってしまう。でもって、笑ってしまうほどのテクニックで、ブラヴーラを捕えれば、古典派の音楽に、不思議なポップ感を生み、これが、とても、とても印象的。モーツァルトが生きた時代というのは、ポップな時代でもあったのかもしれない。現代のポップとはもちろん違うけれど、18世紀なりのポップが、"ARIE DI BRAVURA"には、間違いなく存在している。で、そういう18世紀像へと辿り着いたダムラウの、ブラヴーラなアリアの魅力、すばらしきブラヴーラの時代(モーツァルトばかりでない!)への確信が、アルバムいっぱいに漲っていて。そんなダムラウの意気込みに乗せられて、聴いている側も、何だかテンションが上がってくる感じ。ブラヴーラ・マジック?元気が出てしまうのかも。
ブラヴーラ、ブラーヴァ!ブラヴィッシマ!!!

ARIE DI BRAVURA - DIANA DAMRAU

サリエリ : オペラ 『クビライ、タタールの大汗』 より "Fra I barbari sopetti"
リギーニ : カンタータ 『アポロの誕生』 より "Ove son? Qual'aure io spiro"
サリエリ : オペラ 『見出されたエウロパ』 より "Numi, respiro... Ah, lo sento"
リギーニ : カンタータ 『アポロの誕生』 より "Ombra dolente"
モーツァルト : オペラ 『魔笛』 より 「若者よ、恐れるな」
モーツァルト : オペラ 『魔笛』 より 「復讐の心は地獄のように」
サリエリ : オペラ 『クビライ、タタールの大汗』 より "D'un insultante orgoglio"
モーツァルト : オペラ 『ルチオ・シッラ』 より "In un instante... Parto, m'affretto"
サリエリ : オペラ 『煙突掃除人』 より "Basta, vincesti... Ah non lasciarmi"
サリエリ : オペラ 『セミラーミデ』 より "Sento l'amica speme"
モーツァルト : レチタティーヴォとアリア 「もうたくさんだ、お前は勝った... ああ、私を捨てないで」 K.295a
サリエリ : オペラ 『見出されたエウロパ』 より "Quando piu irato freme"
サリエリ : オペラ 『ラ・フィンタ・シェーマ』 より "Se spiegar potessi appieno"

ディアナ・ダムラウ(ソプラノ)
ジェレミー・ローレル/ル・セルクル・ドゥ・ラルモニ

Virgin CLASSICS/395250 2


さて、"ARIE DI BRAVURA"を、絶好調で盛り上げてくれた、ローレル+ル・セルクル・ドゥ・ラルモニ。その存在、このアルバムで初めて知ったのだけれど、充実を極めるフランス・ピリオド・シーンの次なる世代を担うのか?1970年代生まれの指揮者(ローレル)と、コンサート・マスター(ショーバン)による、2005年創設のピリオド・オーケストラというから、若い... が、若さなればこその勢いと、若さばかりでない堂に入ったサウンドで、ダムラウを思いの外、好サポート!今後の活躍が大いに楽しみになる。




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。