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18世紀、リヴァイヴァル! [2005]

モーツァルト・イヤーともなれば、どう足掻いたって、モーツァルトからは逃れられない...
そんな状況に、多少なりとも抗ってみようと、いろいろ試みるも、何だかんだでモーツァルトに落ち着いてしまったり。結局、ご多分に漏れず、モーツァルトが好きなのだろうなと。ここまで、すでに8タイトルもモーツァルトを聴いてしまった。が、来年はどうするのだろう?これだけモーツァルトで盛り上がってしまった後で、来年のクラシックはどうするのだろう?なんて、妙なことを考えてしまう。モーツァルト熱の後遺症がちょっと恐いのだけれど。
ということで、今からリハビリ?モーツァルトと少し距離を取りつつ、モーツァルトが生きた18世紀を、20世紀にリヴァイヴァルした、擬古典主義の音楽を聴いてみようか... 久々のモダン・サウンド!
デニス・ラッセル・デイヴィスと、彼が率いてきたシュトゥットガルト室内管弦楽団による、ストラヴィンスキー、擬古典主義の作品集(ECM/472 1862)と、ジャナンドレア・ノセダと、彼が率いるBBCフィルハーモニックによる、ダッラピッコラの作品集(CHANDOS/CHAN 10258)を聴く。


デイヴィス+シュトゥットガルト室内管が繰り出す、艶めかしき、ストラヴィンスキー。

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バロック、古典派など、18世紀の音楽の、20世紀におけるリヴァイヴァル... という懐古的な性格を持ちながら、その古い感覚にこそ、モダンを見出した、実に興味深い擬古典主義。その、ロマン主義を脱したサウンドのからりとした感覚は、バッハやモーツァルトを想起させつつも、どこかメカニカルであり、ミスマッチにも思える新旧の連結が、まったくおもしろい音楽を生み出す。そんな擬古典主義を牽引したひとり、ストラヴィンスキー... この人が繰り出す擬古典主義は、また独特で... どこか調子外れというか、アンバランスというか... 今にも崩れそうな奇妙な軽快さがあって、危なっかしさなどどこ吹く風と、飄々と音楽を進めてしまう。
そんなストラヴィンスキーの擬古典主義の作品を取り上げるデイヴィス+シュトゥットガルト室内管。始まりはバロックよりも遡って、ルネサンス!ジェズアルド・ディ・ヴェノーサ(殺人犯にして、半音階を用いた作曲家として有名な... )の400年祭のための記念碑(track.1-3)。で、擬古典主義にしては随分と物々しい音楽を繰り広げるのだけれど... それが、どこかギャグにも思えてしまうのが、ストラヴィンスキーの珍妙なところ?続くダンス・コンチェルタント(track.4-12)では一転、まさに擬古典主義ならではのリズミックな音楽が繰り広げられる。それはまるでシャンパンの泡が吹き上げてくるような沸き立つ感覚で。このあたり、フィリップ・グラスなどのポップな現代作品に長けたデイヴィスならではのもの。また、近現代のスペシャリストとしてのデイヴィスの明晰さが、ストラヴィンスキーの擬古典主義の調子外れを調節し、アンバランスさを巧みに支え、多少、血流不足の観のあった音楽に、たっぷりと血を通わせ、活き活きとした表情を生み出す。この感覚は、『ミュ-ズの神を率いるアポロ』(track.16-25)で、よりはまり。他愛のないアポロを巡ってのミューズたちの恋の鞘当ての物語に、ちょっとドキドキしてしまうような艶めかしさを呼び起こし、どこか危うげで、時にスリリングでもあって... そうありながらも、作品を包む能天気さがまた魅力的。このバレエ、こんなにもおもしろかった?!と、今さらながらに驚いてしまう。
デイヴィスの見事な棒捌きに応えるシュトゥットガルト室内管。その演奏は、「室内」ならではの小気味よさを存分に響かせながらも、実にジューシーなサウンドを実現していて、ぼぉっと体温を感じさせるようなところがある。すると、その温もりがモダンの硬質さを融かして、聴く者を誘惑してくるかのようで。エキセントリックに感じるストラヴィンスキーの音楽が、また違うもののように聴こえてしまうからおもしろい。

IGOR STRAVINSKY ORCHESTRAL WORKS

ストラヴィンスキー : ジェズアルド・ディ・ヴェノ-サ400年祭のための記念碑
ストラヴィンスキー : ダンス・コンチェルタント
ストラヴィンスキー : 弦楽のための協奏曲 ニ調 「バーゼル協奏曲」
ストラヴィンスキー : バレエ 『ミュ-ズの神を率いるアポロ』

デニス・ラッセル・デイヴィス/シュトゥトガルト室内管弦楽団

ECM NEW SERIES/472 1862




ノセダ+BBCフィルで再発見する、ムーディー、ダッラピッコラ。

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イタリアにおける最初の12音技法の使い手... ファシズム支配下の息苦しさから生み出されたオペラ『囚われ人』など、ダッラピッコラのイメージは、どこか硬いイメージがある。という以前に、なかなか耳にすることのできない作曲家であって、その全体像はイメージしづらくもある。そうしたところにリリースされた、ノセダ+BBCフィルによるダッラピッコラの作品集。レスピーギばかりではないイタリアの近代音楽を知る絶好の機会に...
しかし、イタリアの近代音楽というのが、とにかく影が薄い。レスピーギですら、ローマ3部作の他に、何があるのかよくわからない。やっぱり「イタリア」といえば、良くも悪くもオペラでしかないのか?なんて、安易な判断を鮮やかに覆してくれるダッラピッコラの作品の数々。12音技法を用いたとしても、そこにあるサウンドは、紛う事なきイタリアン・サウンド。12音技法の先駆者たち、アルプスの北側の作曲家たちとは一味違う。メロディというイタリアならではの呪縛が、12音技法のシステマティックな冷たさと不思議なハーモニーを結んで、独特の艶を生み出す。近代音楽にして、常にムーディーというおもしろさ。それは、映画音楽的な気分だろうか... このあたりが、派手なレスピーギとも一線を画すようで興味深く。一方で、1曲目のタルティニアーナ(track.1-4)では、その名の通り、イタリアのバロック期のヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ、タルティーニがインスパイアされ、ヴァイオリン・ソロを伴って、擬古典主義のスタイルによる軽快な音楽が繰り広げられる。が、この擬古典主義も、ストラヴィンスキーやフランスの面々とはまた一味違い、やはり独特の艶を感じさせ、擬古典主義、特有の、衒いのようなものも薄めで、タルティーニの雰囲気を、繊細に、ナチュラルに、美しく響かせるのが印象的。
そして、ノセダ+BBCフィルによる演奏だが、そうしたダッラピッコラの、モダンで、ムーディーで、繊細なあたりを丁寧にすくい上げ、作曲家の魅力を、余すことなく伝えてくれている。それから、あまり目立たないのだけれど、タルティニアーナ(track.1-4)では、エーネスがヴァイオリン・ソロを弾いていて、そのさり気なくスムーズな演奏も密やかに魅力的。何より、イタリア期待の次世代マエストロ、ノセダの、故国、イタリアの近代音楽への強い思い入れも感じさせ、知られざる作品の数々の魅力を、より美しく、雄弁に繰り広げ印象的。それにしても、ダッラピッコラって、思いの外、魅惑的!で、素敵!

DALLAPICCOLA: VARIAZIONI ETC. Ehnes/BBC Phil./Noseda

ダッラピッコラ : タルティニアーナ 〔ヴァイオリンとオーケストラのためのディヴェルティメント〕 *
ダッラピッコラ : 2つの小品
ダッラピッコラ : 小さな夜の音楽
ダッラピッコラ : バレエ 『マルシア』 からの 交響的断章
ダッラピッコラ : 管弦楽のための変奏曲

ジェイムズ・エーネス(ヴァイオリン) *
ジャナンドレア・ノセダ/BBCフィルハーモニック

CHANDOS/CHAN 10258




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