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ラウダーテ・プエリ・ヴィヴァルディ! [2006]

20世紀後半、イ・ムジチの『四季』がきて... 20世紀末、イル・ジャルディーノ・アルモニコの『四季』がきて... そして、21世紀、naïveが仕掛けるVIVALDI EDITION。
バロックのスター、ヴィヴァルディ。人気作曲家だが、その再発見は、まだまだ途上の段階。そして、再発見が進めば進むほど、ヴィヴァルディを取り巻く状況は刻々と変化している。そうした、ヴィヴァルディ・ルネサンスの牽引役が、naïveによるVIVALDI EDITION。様々なスタイルによる協奏曲、室内楽、そして教会音楽、オペラ... これまでと大きく異なり、協奏曲に偏ることなく、バロックのスターの全てを網羅していこうというそのシリーズの意義は、極めて大きい... なんて、堅苦しい話しはさておき、再発見が進めば進むほど、刺激的でおもしろくなる一方のヴィヴァルディ・ワールド。その音楽は、まさに体感型。ある種、バロックのトランス系?このユーロ・ビートは、現代にだって通用してしまうはず。超絶技巧のジェット・コースターに、バロックをロックしてしまう過激なピリオドの作法が加われば、パワフルなビートを刻んで、もう、恐るべし!そんな最新のヴィヴァルディを2タイトル...
イ・ムジチの流麗なスタイルから、大きくギア・チェンジを果たした革命児、イル・ジャルディーノ・アルモニコの『四季』、伝説のソリスト、エンリコ・オノフリのヴァイオリンに、アレッサンドロ・デ・マルキの指揮、アカデミア・モンティス・レガリスの演奏によるヴァイオリン協奏曲集、VIVALDI EDITION、Vol.29(naïve/OP 30417)と、サンドリーヌ・ピオーのソプラノをメインに、オッタヴィオ・ダントーネ率いる、アカデミア・ビザンティナの教会音楽集、VIVALDI EDITION、Vol.31(naïve/OP 30416)を聴く。


オノフリによるヴァイオリン協奏曲集、ヴィヴァルディ・エディション、Vol.29。

OP30417.jpg
いきなりクライマックス?!かと思うような、1曲目、「グロッサ・モグール」の1楽章。終楽章と間違えて演奏していない?なんて、最初っからブっ飛ばすヴィヴァルディ・ワールド。オノフリのソロも、バリバリのバロック・ロックを繰り広げてくれる。かと思えば、2楽章(track.2)などは、哀切たっぷりに、まるでツィゴイネル・ワイゼンでも聴いているような感覚に... ヴィヴァルディの中にジプシーの音楽を見出すようなおもしろさ... オノフリ、アンタは古楽界のラカトシュか?!で、そんなノリが、断然、カッコいい!一転、3楽章(track.3)ともなれば、あっさり気分を変えて、カラっと爽やかに、パカニーニが遠くに見えてきそうな超絶技巧の数々。あっちへこっちへと振り回されるような、ヴィヴァルディ・ワールド。それは、まさにジェット・コースター... 一度、乗ってしまえば、後はもう...
という具合に、スリリングな音楽が詰まった1枚は、オノフリのみならず、彼の妙技を支える、デ・マルキ+アカデミア・モンティス・レガリスの演奏も最高!エッジは鋭く、スタイリッシュで、スリリング... かと思えば、オノフリに負けじと、かぶいて見せて、そんな丁々発止のやり取りがジェット・コースターをますます加速させてゆく。まさに、体感する音楽がここにある。と、大いに盛り上げておきながら、アルバムの締めは、なんと「休息」。そんなタイトルにぴったりのサウンドが、激しいコンチェルトを聴いた耳をクールダウンさせて... 密やかな1楽章(track.16)に始まり、すやすやと寝息が聞こえてきそうなドリーミンな2楽章(track.17)。そして、穏やかで、やさしさに溢れた終楽章(track.18)。こんなにも愛らしいコンチェルトもまた、ヴィヴァルディ・ワールド。で、こういうサウンドを最後に持ってきた選曲の、粋なこと!

Vivaldi Concerti per violino I 'La caccia'

ヴィヴァルディ : ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 RV.208 「グロッサ・モグール」
ヴィヴァルディ : ヴァイオリン協奏曲 ト短調 RV.332
ヴィヴァルディ : ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 RV.234 「不安」
ヴィヴァルディ : ヴァイオリン協奏曲 ハ短調 RV.199 「疑い」
ヴィヴァルディ : ヴァイオリン協奏曲 変ロ長調 RV.362 「狩」
ヴィヴァルディ : ヴァイオリン協奏曲 ホ長調 RV.270 「休息」

エンリコ・オノフリ(ヴァイオリン)
アレッサンドロ・デ・マルキ/アカデミア・モンティス・レガリス

naïve/OP 30417




アカデミア・ビザンティナの教会音楽集、ヴィヴァルディ・エディション、Vol.31。

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1曲目、モテット『いと公正なる怒りの激しさに』、同名のアリアは、まさに激しさと、華麗さで、これぞイタリア・バロックの醍醐味。「教会」というイメージを吹き飛ばす、極めつけのオペラティックなナンバー。かと思えば、アリア"Tunc meus fletus"(track.3)の、ピオーの美声が空間いっぱいに広がってゆくこの感覚... 幽界を彷徨う魂のような、心もとなくも、神秘的で透明な美しさは、得も言えぬもの。まさに、ピオーの美声を味わい尽くすナンバー。一転、沈痛極まるシンフォニア(激しくて、軽やかで... ばかりでないヴィヴァルディ・ワールドの、幅の広さには恐れ入る... )を挿んで、軽やかな『ラウダーテ・プエリ・ドミヌム(主の僕たちよ、主をほめたたえよ)』では、"A solis ortu"(track.9)の、夜明けの空のように穏やかで、空が次第に白んでゆくように、ピオーの声が伸びていくのが印象的。単に激情に走るのではない、あくまでクラッシーな、ピオーのヴィヴァルディ。それを支えるアカデミア・ビザンティナも、端正でかちっとした演奏を聴かせる。そして、このクラッシーさと、かちっとした演奏が結びついて生み出されるサウンドは、味わい深く、濃厚で、そこはかとなく迫ってくるものがある。このあたり、他のイタリアのピリオド・オーケストラが聴かせるサウンドとは、また一味違うテイストのように思う。
アカデミア・ビザンティナというと、1999年、ベリオをフィーチャーしたコンポージアムに出演して、バロックとベリオ作品を演奏してのけたオーケストラだが、元々、モダンからピリオドへ移行していったオーケストラということで、モダンの手堅さみたいなものが、そのサウンドの中にあるような気がする。これまでは、そのあたりに物足りなさも感じてもいたが、このアルバムには、手堅さが生む迫力があって、なかなか魅力的... と、今頃、アカデミア・ビザンティナという存在に開眼。近頃、存在感を増しているように感じるのも、彼らの調子が上がってきているということか。アルバム、後半の2つのコンチェルト(教会コンチェルト)も、味わい深い。

Vivaldi In furore, Laudate pueri e Concerti sacri

ヴィヴァルディ : モテット 『いと公正なる怒りの激しさに』 RV.626 *
ヴィヴァルディ : シンフォニア ロ短調 「聖なる墓にて」 RV.169
ヴィヴァルディ : 詩篇 『主の僕たちよ、主をほめたたえよ』 RV.601 *
ヴィヴァルディ : ヴァイオリンとオルガンのための協奏曲 ニ短調 RV.541 *
ヴィヴァルディ : ヴァイオリン協奏曲 ヘ長調 「聖ロレンツォの祝日のために」 RV.286 *

サンドリーヌ・ピオー(ソプラノ) *
ステファノ・モンタナリ(ヴァイオリン) *
オッタヴィオ・ダントーネ(オルガン)/アカデミア・ビザンティナ

naïve/OP 30416




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