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チェコが生んだ古典派スター、ヴァンハルのポップ・ミサ! [before 2005]

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祝!モーツァルト、生誕250年のメモリアル。だが、その周辺も賑わう?
タワーレコードが、NAXOSの音源から編んだコンピレーション『ファンタジスタ!モーツァルト』(NAXOS-タワーレコード/TWMZ-1)の10枚組BOXが、¥3000でおつりが来てしまうという驚異的なお手頃価格もあって、大好評らしい... その内容も、初心者大歓迎な、メモリアルに絶好のモーツァルト・ガイドであり、かつ、クラシック・ファンにとっても、ちょっとしたモーツァルト事典といったところで、侮れない好企画。また、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンにあわせてのリリースということもあり、音楽祭同様に、「モーツァルトと仲間たち」のサブタイトルが付せられて... そんな仲間たち、モーツァルトの先輩、ライバル、友人らの作品も10枚組の内、2枚にまとめられ、思い掛けなくヴァラエティに富んでいて、モーツァルトの時代のモーツァルト以外の音楽が、実に興味深い!
さて、モーツァルトばかりでないのが近頃の傾向?モーツァルトという巨大なアイドルが大々的に取り上げられることで、その周辺も、イモヅル式に取り上げられつつある。これまで、ハイドン、モーツァルトという名前だけで片付けられていた、古典派が、メモリアルというお祭り騒ぎで、いろいろ掘り起こされること、実は、モーツァルト・イヤーの最大の収穫に感じて来た。というより、モーツァルト・イヤーに関わらず、今、18世紀の再発見が、静かに熱を帯びている気配も... クラシックは19世紀ばかりでない!が、じわりじわり広がりつつある?
ということで、モーツァルト・イヤーに、モーツァルトではなくて、モーツァルトの同時代を生きた作曲家... それも、モーツァルト以上にスターだった?チェコ出身の作曲家、ヴァンハルの2つのミサ(NAXOS/8.555080)を、ウーヴェ・グロットの指揮、タワー・ヴォイセズ・ニュージーランドのコーラス、カナダのピリオド・オーケストラ、アレイディア・アンサンブルの演奏で聴く。

ヨハン・バプティスト・ヴァンハル(1739-1813)。
チェコの北東部、ネハニツェという小さな町で、農家に生まれたヴァンハル(本来のチェコ語では、ヤン・クシュチテル・ヴァニュハルとなる... )。その後の活躍を考えると、驚かされるのだが、大きな街に出て、特別に音楽教育を受けたわけではなく、地元で音楽を学び、オルガニストなどをしてそのキャリアをスタートさせたとのこと... で、チェコの音楽教育というのが馬鹿にならない!チェコ全体に広がる草の根的音楽教育のレベルというのが、相当に高かったらしい。18世紀、多くのチェコ出身の作曲家がヨーロッパ中で活躍したのは、単にそれぞれの作曲家の天才性に寄るものばかりでなく、しっかりとした音楽の基礎を築いていたかららしいのだけれど... 恐るべし、隠れた音楽大国、チェコ... さて、ヴァンハルに話しを戻して。やがてその才能は、シャフゴーチュ伯爵夫人の目にとまり、その支援で、ウィーンへ。ウィーンではディッタースドルフ(1739-99)に作曲を学び。さらには、リーシュ男爵の支援により、イタリアを巡り、最新モードを吸収。ウィーンへと戻り、拠点とすると、古典派の一角として頭角を現し、その名声は、次第にヨーロッパ中に知れ渡り、1770年代、まさに国際的なスターであった。
そんなヴァンハルの2つのミサを聴くのだけれど... これまで交響曲のイメージが強かったヴァンハル(というより交響曲しか聴いていなかったか... )。ということで、興味津々で聴く、ヴァンハルのミサ。で、驚いた!何とポップな!まずは、ミサ・パストラーリス(track.1-6)の、文字通りパストラル=田園風なあたりに、恐れ入る。それは突き抜けてのどかで、笑っちゃうくらいに朗らか。日曜、教会に行くのを止めにして、田園までピクニックに来ました!ぐらいのノリ... いや、ミサがこれでいいのか?!とも思うのだけれど、いいんです!ってくらいに、ヴァンハルの音楽は、圧倒的に、"パストラーリス"を貫いていて... そんな音楽は、ちょっと耳にしただけで、一緒になって口ずさめそうなキャッチーなメロディでいっぱいで... 教会の辛気臭さはもちろん、クラシックの気難しさも、そよ風で吹き飛ばしてしまう。それから、もうひとつのミサ、ミサ・ソレムニス(track.7-12)なのだけれど... さすがにソレムニス(荘厳)な気分が漂う。漂いつつ、やっぱりポップ!溌剌とした魅力で、はちきれんばかり。それでいて、グローリア(track.8)での伸びやかなヴァイオリン・ソロの美しさなどは、まさに古典派の時代ならではのもの。その少した後で、ピホピポとかわいいサウンドを聴かせるオルガンは、バロックの雰囲気を残しているのだけれど、「美しい」も「かわいい」も、結局、ポップへと集約されて。この感覚こそが、18世紀、古典派の時代の空気感だったのかも... そんな風に思えて来る2つのミサ。いや、こんなにもラヴリーなミサがあったとは... 何だか、凄い...
そんな、ヴァンハルを、おもいっきり楽しませてくれた、グロットの指揮、アレイディア・アンサンブルの演奏、タワー・ヴォイセズ・ニュージーランドのコーラス、そしてソリストたち!アレイディア・アンサンブルならではのしっかりとしたサウンドに、ほんわかした歌声を響かせるタワー・ヴォイセズ・ニュージーランド。思いの外、絶妙にヴァンハルのセンスにはまっているように感じる彼らのパフォーマンス。世界初録音だったとのことだが、何と恵まれた"初"だろう。恐る恐る探りながらではなく、信じた道を堂々と突き進んで生まれたポップ感!こんなにキラキラしているサウンドは、ちょっと他には探せないように思う。最初こそ、多少、たじろぎもしたが、まったく以って気持ちのいい音楽を繰り広げてくれる。そうして、ハッピーにしてくれる!

VAŇHAL: Missa Pastoralis ・ Missa Solemnis

ヴァンハル : ミサ・パストラーリス ト長調 (Weinmann XIX:G4)
ヴァンハル : ミサ・ソレムニス ハ長調 (Weinmann XIX:C7)

マリー・ヘイスン(ソプラノ)
ニーナ・スコット・ストッダート(アルト)
コリン・エインワース(テノール)
スティーヴン・ピッカネン(バリトン)
タワー・ヴォイセズ・ニュージーランド(コーラス)
ウーヴェ・グロット/アレイディア・アンサンブル
ジェイムズ・ティブルス(オルガン)

NAXOS/8.555080


ところで、ミサ・パストラーリスのクレド(track.3)で、モーツァルトのレクィエムのラクリモサのフレーズがフっと聴こえて来て... デジャヴュ?ちなみに、ミサ・パストラーリスは1782年に作曲されたとのこと。モーツァルトのレクィエムの9年前の作品となる。で、モーツァルトの周辺を聴いていると、時々、こうしたデジャヴュに遭遇するような気がする。うっかり、モーツァルトに似ている... と言いそうになるのだけれど、モーツァルト"が"似ていることに、ハっとさせられる。天才モーツァルトは、時代のスポンジでもあって、きっと様々な音楽を吸収していたのだろう。周辺を聴いて、デジュヴュをいろいろ体験して、モーツァルトも、古典派という時代全体も、よりよく見えて来るのだろう。と、頷きながら、ヴァンハルの中のモーツァルトの姿を見つめた。
いや、ヴァンハル、おもしろい!




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