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交響曲の父がいて、交響曲の母がいて... [2006]

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そうして、ベートーヴェンや、ブルックナー、マーラー... の交響曲が、今にある。
クラシックの大黒柱となれば、やっぱり"交響曲"。クラシック=交響曲と言っても、そう問題は無いように思う。そんな"交響曲"、かつて音楽室で習ったことは、「交響曲の父、ハイドン... 」であった。が、交響曲の歴史において、今、その源流を求めたならば、ハイドンではあまりに完成され過ぎてしまっていることに気付くわけだ。そこへ来て、そこはかとなしに古典派ブーム?ハイドンでもなく、モーツァルトでもない、ポスト・バロックの作曲家たちの再発見が進み、交響曲の育ての父ばかりでなく、交響曲の生みの親(それは母?)の所在が見えて来たような... ということで、交響曲の生みの親を求めて、イタリアの前古典派に辿り着く...
ケヴィン・マロン率いる、アレイディア・アンサンブルの演奏で、18世紀半ば、ミラノで活躍した作曲家、交響曲の生みの親と考えられる、ジョヴァンニ・バティスタ・サンマルティーニ(ca.1700-75)の、生まれたての交響曲(NAXOS/8.557298)を聴く。

交響曲はよく聴く。けれど、その始まりについては、ほとんど触れられることはない。で、その始まりがどんな風だったか、詳しくは知らない... で、いいのか?と思う。別にいいのかもしれないけれど、やっぱり気になる。ということで、wikiにて、ちらりと「交響曲」を見てみれば... いわゆるオペラの序曲としてのシンフォニアが独立し、シンフォニーに... それを独立させたのが、後の古典派に大きな影響を与えた、ジョヴァンニ・バティスタ・サンマルティーニとのこと。交響曲というと、とにかくドイツ―オーストリアのイメージがあるわけだけれど、イタリアのバロック・オペラと、先んじてバロックから脱しようとしていたイタリアの前古典派の作曲家の間に、交響曲は生まれたとは、なかなか興味深いものがある。そうか、交響曲の両親はイタリア人だったか、と...
そして、その生まれたての交響曲なのだが... その後の交響曲に比べたら、もちろんシンプルそのものなのだけれど、シンプルなりの美しさが印象的で。交響曲がアカデミックに武装する前の流麗さ、バロックを脱しつつある瑞々しいサウンドは、連綿と続く音楽史の一瞬を切り取ったようであり、バロックから古典派への過渡期の興味深い姿を響かせる。バロック期のコンチェルト・グロッソのように聴こえるところもあれば、ハイドンやモーツァルトの音もすでに聴こえていて... 新旧のスタイルの間を、どこか悩ましげに揺らめくのも、魅力的。そうして、思いの外、たおやかに、やわらかに、ナイーヴな音楽が綴られてゆく。そういう点で、バロックと古典派をつなぐであろう、感情の幅の大きい多感主義とは一線を画すのか... というより、多感主義の作曲家たちの交響曲よりも、より古典派的な音楽世界をすでに切り拓いているようで、とても新鮮。何より、G.B.サンマルティーニが、後の古典派に大きな影響を与えたということに納得。しかし、こうした交響曲(1730年代から50年代の作品が収録されている... )の作曲が、バッハの後半の人生と重なることの驚き!改めて、18世紀、イタリアの先進性と、18世紀、ヨーロッパ音楽の新旧の混在、多様性に感じ入る。そうした、18世紀の豊かな音楽の広がりを、普段、あまりに安易なイメージで語られてしまっていることに、もどかしさを感じずにはいられない... まったく、残念だ...
という、興味深い生まれたての交響曲を聴かせてくれた、マロン+アレイディア・アンサンブル。ヘンデルの『水上の音楽』と『王宮の花火の音楽』(NAXOS/8.557764)で、にわかに彼らの虜となってしまって聴くG.B.サンマルティーニでもあったのだけれど... 彼らならではの流麗な演奏が、前古典派のサウンドにぴたりとはまり、最高にナチュラルで、とにかく心地いい!それでいて、G.B.サンマルティーニの過渡期の美を丁寧に拾い上げ、より美しく際立たせてもいるようで。当然、資料的な意味合いも強いアルバムかもしれないが、生まれたての交響曲、生まれたての古典派の初々しさを、透明感と輝きを以って響かせ、清々しい!

SAMMARTINI: Symphonies J-C 4, 9, 16, 23, 36 & 62

サンマルティーニ : 交響曲 イ長調 (J-C 62)
サンマルティーニ : 交響曲 ハ短調 (J-C 9)
サンマルティーニ : 交響曲 ニ長調 (J-C 16)
サンマルティーニ : 交響曲 ヘ長調 (J-C 36)
サンマルティーニ : 交響曲 ニ短調 (J-C 23)
サンマルティーニ : 交響曲 ハ長調 (J-C 4)

ケヴィン・マロン/アレイディア・アンサンブル

NAXOS/8.557298



それにしても、生まれたての交響曲のは、なんと穏やかなことか!
が、やがて、交響曲の父によって質実剛健に育てられ(ハイドンの1番の交響曲が1750年代の後半... 最後の「ロンドン」が1795年... )、さらに、その先には、ベートーヴェン(「英雄」の完成が1804年... )が続くわけだ。交響曲は、1世紀にも満たない期間で、急成長してゆくわけだ。




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