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眼鏡を外して、化粧を取って... [2006]

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そんなジャケットに、つい目が行ってしまった、デセイのアルバム。で、そこに写っているモデルは誰?と、よくよく見れば、このアルバムの歌手と指揮者。デセイとアイム。その2人の変わり様に驚きつつ、ちょっと感心してみる。それにしても、見た目にあまり頓着しないのが、これまでのクラシックの面々。音楽で勝負するならば、見た目なんてものは、気にする者ほど二流?聴く側にも、そういう空気はあったかもしれない。が、やっぱり、小奇麗にしていて失敗はない。そして、近頃のクラシック、そういうあたりにも少し気を使い出しているのか?小難しいクラシック... というイメージ、せめてパッケージだけでも払拭してみる。というのは、大いなる一歩のようにも感じる。例え古典であったとしても、21世紀におけるクラシックのヴィジュアルは、より新しいものであってもいいのかもしれない。というより、イメージの刷新は大歓迎!デセイとアイムの変身ぶりに、そんなことをふと思う。
さて、音楽に話しを戻しまして、そのデセイのアルバムを含む、ヘンデルを2タイトル... まずは、ケヴィン・マロン率いる、アレイディア・アンサンブルの『水上の音楽』と『王宮の花火の音楽』(NAXOS/8.557764)。ナタリー・デセイ(ソプラノ)が、エマニュエル・アイム率いる、ル・コンセール・ダストレの演奏で歌う、イタリアン・カンタータ集(Virgin CLASSICS/3438422)を聴く。


色眼鏡を外して... 『水上の音楽』に、『王宮の花火の音楽』を、改めて見つめる。

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どうも、あちらこちらで、その評判を目にしてしまい、つい気になって... という、マロン+アレイディア・アンサンブルの新解釈による『水上の音楽』と『王宮の花火の音楽』。まさに、ヘンデル"ど真ん中"の2曲。正直、今さら... と思っていたのだけれど、"新解釈"とならば、斬新なヘンデルを聴かせてくれる?と、ちょっと興味本位で聴いてみることに... で、その新解釈、『王宮の花火の音楽』の3曲目、「平和」(track.20)に、フラウト・トラヴェルソが用いられるのだけれど。勇壮なこの作品の、気分転換?牧歌的な「平和」には、フラウト・トラヴェルソのやさしげな表情が似合うのかもしれない。が、新解釈としてのインパクトは、やっぱり、薄いか...
一方で、マロン+アレイディア・アンサンブルの演奏に驚いてしまう。そのナチュラルで、落ち着いたサウンドが思い掛けなく魅力的!もう、最初の一音から、惹き込まれる。それは、バロック・ロックな流行りのスタイルとは一味違う、やわらかな雰囲気が広がっていて。かと言って、一昔前のユルいバロック像とも違う、ピリオドなればこそのクリアさから素直に響かせる、ふんわりと、より豊かな色彩で以って描かれるヘンデル... すると、どことなくフランスのバロック、あるいはその先にあるロココを見出すようで、興味深く。例えば、第1組曲の「ホーンパイプ」(track.7)、軽やかにタンバリンが打ち鳴らされ、ちょっぴりダンサブルなあたりは、ラモーのバレエを思わせる。そんなヘンデルがとても新鮮で... テムズ川での豪奢なイヴェントは、また違う表情を見せ始める。
『水上の音楽』に続く、『王宮の花火の音楽』も含め、祝祭用音楽、ということで、フェスティヴァル!なスペクタクル(ニケ盤などがその最右翼... )を求めがちだったけれど、マロン+アレイディア・アンサンブルの演奏を聴いている内に、フェスティヴァルを超えたところにある、この2作品の魅力を、今さらながらに見つめさせられる。ヘンデルど真ん中の2曲... どこか"バロック名曲撰"的な安っぽさも感じてきたのだけれど、奇を衒わずに、穏やかにして名曲のイメージを塗り替えてしまう、マロン+アレイディア・アンサンブルの演奏は、そんな色眼鏡を、やっと外してくれた秀演。これまでのイメージを忘れて、純粋に楽しめるものだった。

HANDEL: Water Music ・ Royal Fireworks

ヘンデル : 組曲 『水上の音楽』 第1番 ヘ長調 HWV.348
ヘンデル : 組曲 『水上の音楽』 第2番 ニ長調 HWV.349
ヘンデル : 組曲 『水上の音楽』 第3番 ト長調 HWV.350
ヘンデル : 『王宮の花火の音楽』 HWV.351

ケヴィン・マロン/アレイディア・アンサンブル

NAXOS/8.557764




ノーメイク=自然体が紡ぎ出す、イタリアン・カンタータのハッピー感!

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とにかく、そのジャケット... デセイとアイムの姿に驚かされたわけだけれど... やっぱり、彼女たちの歌、演奏があってこそ... そして、もちろん、いつも通りのすばらしさ!いや、それ以上?1曲目、オーボエの軽やかな音色に導かれて始まる『愛の妄想』の序曲から、明るく、朗らかなトーンに、ただならず魅了されてしまう。そんなアイム+ル・コンセール・ダストレの演奏に乗って、心地よく歌い出すデセイ... そのエアリーな存在感が素敵!それは、デセイの希有な才能だけではない、気心の知れたアイムとの親近感が作用する部分も大きいのかもしれない。ル・コンセール・ダストレのふんわりとした色彩感に包まれ、より映えるデセイの歌声に、改めて魅了される。そうして紡がれるヘンデルのサウンドは、まるで、春のそよ風... そして、そよ風に吹かれる心地よさたるや!
青春、真っただ中、ヘンデルのイタリア時代(1706-10)のカンタータ、『愛の妄想』(track.1-12)と、『私の心が躍る』(track.14-19)、そして『アチス、ガラテアとポリフェーモ』からのアリア(track.13)を歌うアルバムは、その後のヘンデル"ど真ん中"のロンドン時代(1712-)の代表作とは一味違う、イタリアの空気を胸一杯に吸い込み、軽やかで、愉悦的で、新進作曲家が放つ瑞々しさで充ち充ちている。ディキシット・ドミヌス、オラトリオ『復活』といった、ヘンデルのイタリア時代の大作も魅力的だが、このアルバムで取り上げられる、ソロ・カンタータの何気なさは、ちょっと替え難いものがある。また、全編で、やわらかな音色を聴かせるパトリック・ボージローのオーボエが印象的で、デセイばかりでなく、オーボエも鍵となるこのアルバム。歌、オーボエ、そしてオーケストラと、絶妙なアンサンブルが、ヘンデルのイタリア時代をより際立ったものとし、何より、ハッピーな気分にしてくれる。
そして、このアルバムのもうひとつの楽しみが、録音風景を撮らえた、おまけのDVD(国内盤には付いてません... )。まず気になるのが、ジャケットからは程遠い2人、ノーメイクのデセイとアイム。しかし、ノーメイク=自然体の2人の、実に魅力的なこと!肩の力が抜けきったところから溢れ出る音楽に、CD以上に魅了されてしまう。いや、録音風景なのだから、同じ音のはずなのだけれど... なんて素敵な現場の雰囲気!こういうところから生まれたサウンドだからこその、ハッピー感なのだなと、納得。

Delirio HANDEL - Natalie Dessay - Emmanuelle Haïm

ヘンデル : カンタータ 『愛の妄想』 HWV.99
ヘンデル : カンタータ 『アーチ、ガラテア、ポリフェーモ』 HWV.72 より
   アリア 「ここでは小鳥が喜ばしげに木から木に飛び回り... 」
ヘンデル : カンタータ 『私の心が躍る』 HWV.132b

ナタリー・デセイ(ソプラノ)
エマニュエル・アイム/ル・コンセール・ダストレ
パトリック・ボージロー(オーボエ)

Virgin CLASSICS/3438422




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