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ビート・マニアックな太鼓の達人たち... [before 2005]

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クラシックにおけるパーカッションの存在を考えてみる。
例えば、ラヴェルのボレロに、小太鼓が無かったら?いや、考えられない... けれど、小太鼓は主役か?けしてそうではない... パーカッションは、ビートを創り出すセクション。オーケストラの縁の下の力持ち。それ以上のことを期待されることは滅多にない。が、あえて、縁の下から舞台上に引っ張り出したならどうなるだろう?当然ながら、舞台上には剥き出しのリズムが展開するわけだ。さて、クラシックはその剥き出しに耐えられるだろうか?そんなことを思わせる刺激的なアルバムを聴いてみようと思う。耳にではなく、身体にダイレクトに響いてくる、パーカッションが主役となった音楽。理屈抜きのビートの饗宴!
ということで、ドイツのパーカッショニスト、ペーター・ザードロと、その仲間たちによる、定番から最新作まで、幅広くパーカッションのための作品を集めた"Drum Together"(TELDEC/8573-85877-2)。近頃、うららかな陽気に包まれて、春眠暁をまったく覚えず、ぼんやりしがちな心と身体に、ビート一発!刺激的なパーカッションで、頭スッキリ。目覚めさせます。

パーカッションのソリスト... 改めてクラシックの世界を見渡して、ソリストとして活躍するパーカッショニストの名前をいくつ挙げられるだろうか?いや、ほとんどない。こうしたあたりに、パーカッションの分の悪さをもの凄く感じる。そして、それでも存在感を見せるパーカッショニストたちは、本当に凄いと思う。そんなひとり、ペーター・ザードロ。ミュンへン・フィルのパーカッショニストを経て、今では"ソリスト"として活躍する... やっぱり凄い... 単に凄いのではなくて、ただならない。いや、ザードロのパフォーマンスばかりでなく、パーカッションそのものがただならない!「叩く」という行為が、他の楽器に比べると、プリミティヴに感じられるわけだが、「叩く」ことの奥深さ、幅広さに気付けば、パーカッションは、マジカルな魅力を放ち始める!いや、今までその魅力に気付いて来なかったことに愕然とさせられる、極めて多彩で、表情豊かで、魅力に溢れた"Drum Together"...
始まりは、オーストラリアのピアニストにして作曲家、ディーン・ウィルミントンのヒート。作曲者自身が吹く、アボリジニの民俗楽器、ディジェリドゥ(管楽器)のミステリアスなサウンドに彩られながら、ザードロのマリンバがフュージョンを思わせる音楽を紡ぎ出す。クラシックというカテゴリーに押し留めていて、良いのだろうか?というほど、ボーダー・レスな感性が充ち満ちている。ニュー・エイジとワールド・ミュージックの直通乗り入れ?思い掛けなくクールな音楽が展開されて、惹き付けられる。さらにクールなのが、3曲目、マティアス・シュミットのガナイア(track.3)。カリンバがアクセントを効かせての、アフリカン!プリミティヴで、カラフルで、何よりボシティヴなノリの良さ!そして、5曲目は、三木稔のマリンバ・スピリチュアル(track.5)。意外とダイレクトに「和」を響かせてしまうパーカッションの名曲なのだけれど... 和太鼓の伴奏もありつつ、マリンバによって、かつ西洋人によって、「ヤァーッ!」みたいな、掛け声も入り、思いっきり「和」が奏でられてしまうおもしろさ。いや、アボリジニ、アフリカに負けず、スリリングで疾走感に溢れた後半などは、カッコ良過ぎ!そんな、キャッチーで個性際立つ作品に挟まれた2曲、ジョン・ケージの第3コンストラクション(track.2)と、クセナキスの名作、プサッファ(track.4)... コアな現代音楽が絶妙にアクセントとなっており、それぞれの作品が互いを際立たせ、引き立たせ、効果的。で、最後は、ナーンドル・ヴェイスのインプヴィゼーション・ラティーノ(track.6)。スティールパンのカラフルでファンタジックなサウンドに夢見心地になるも、すぐに激しいドラム(楽器ではなく、生活の周辺に転がっているものを、楽器として叩く!)の嵐、強烈なラテンの熱狂へと落ちていく... 剥き出しになったリズムの饗宴... いや、真骨頂。
こうして、"Drum Together"を聴いて、思うことは、やはり、ザードロ、凄いなと。縦横無尽に叩きまくり、ジャンルを越境し、聴く者を違う次元へと連れ去っていく... ニュー・エイジ的かと思えば、ワールド・ミュージック的であり、かつ、しっかりと"ゲンダイオンガク"も表現し切って、変幻自在。特に、このアルバム、唯一の、ザードロのソロとなるプサッファ(track.4)の、緊張感と深み。たった独り、「叩く」ということだけで創り出されていく音楽世界の広がりに圧倒される。で、パーカッションのあまりの豊かさに衝撃を受けることに。もちろん、収録された現代の作曲家による6つの作品が、ジャンルを超越してしまうほど極めて多彩で、それぞれに個性が際立っていることもあるのだけれど、それを可能としているパーカッションの自由闊達さ!今さらながらに、その表現の幅に感服させられる。てか、これまでパーカッションのステレオタイプ(オーケストラの後ろの方にいる盛り上げ役。みたいな... )に毒されて来たことを、猛省。それ促す、ザードロに賞賛。

DRUM TOGETHER PETER SADLO & FRIENDS

ディーン・ウィルミントン : ヒート
ジョン・ケージ : 第3 コンストラクション
マティアス・シュミット : ガナイア
ヤニス・クセナキス : プサッファ
三木 稔 : マリンバ・スピリチュアル
ナーンドル・ヴェイス : インプロヴィゼーション・ラティーノ

ペーター・ザードロ & フレンズ(パーカッション、他、いろいろ... )

TELDEC/8573-85877-2




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