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華麗なるヴィルトゥオーゾの時代を、今、輝かせる! [2005]

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どうも、定番の名曲が苦手だったりする... なぜだろう?ちょっと押し付けがましい気がする?いや、名曲というのは、それだけ訴え掛けるものがあって、名曲の名曲たる所以は、間違いなくあると思う。のだけれど、天の邪鬼なものだから、そういう定番に抵抗がある。いや、「名曲」から解き放たれ、もっと柔軟に幅広い視点を持てたならば、クラシックはより刺激的なものになるんじゃないかと... 何より、定番の名曲から少し視線をズラしたなら、そこにはどんな曲があるだろう?という、好奇心を掻き立ててくれる、hyperionの"The Romantic Piano Concerto"のシリーズ。ロマン主義の時代こそ、クラシックの核。で、定番に縛られがち。だからこそ、際立ってマニアックに展開し、定番に風穴を開けてくれる意欲的なシリーズ。その第38弾、ショパンが世を去って後のポーランドと、チャイコフスキーの登場が準備されるロシアのロマン主義を見つめるアルバム...
現代のヴィルトゥオーゾ、マルク・アンドレ・アムランのピアノ、マイケル・スターンの指揮、BBCスコティッシュ交響楽団の演奏による、ヴィルトゥオーゾ全盛の時代を彩った2人のコンポーザー・ピアニスト、シャルヴェンカの1番のピアノ協奏曲と、ルビンシテインの4番のピアノ協奏曲(hyperion/CDA 67508)。ロマンティックの濃度が増す?東欧のピアニズムを聴く。

まずは、シャルヴェンカから... で、ポーランド西部、シャモトゥウィ(当時はプロイセン王国領... )に生まれたクサヴァー・シャルヴェンカ(1850-1924)。幼くしてピアノに興味を示し、独学ながら才能の片鱗を見せると、一家はベルリンに移住、兄とともにベルリンの新音楽アカデミーに入学(1865)。ピアニストとして一気に才能を開花させ、卒業の翌年、1867年には、母校に教師として迎えられるほど(教育者としても活躍したシャルヴェンカは、後に自身の音楽院を設立... )。1869年には、ベルリン・ジングアカデミー(1791年、合唱協会として設立されたが、合唱に留まらず、コンサートホールを有し、オーケストラを併設、ベルリンの音楽シーンを先導した... )で、ピアニストとしてデビュー。以後、ヴィルトゥオーゾとして華々しい活動を繰り広げ、北米ツアーをするほどの国際的な名声を勝ち取る。そんなシャルヴェンカ、25歳の時に初演した、1番のピアノ協奏曲(track.1-3)。リスト風の、憂いを秘めつつも力強いロマンティシズムが繰り出される1楽章に始まり、サン・サーンスを思わせるような明朗さとエスプリを感じさせる2楽章(track.2)、ブラームス調の重々しい出だしから華麗なるヴィルトゥオージティが炸裂する終楽章(track.3)と、聴きどころ満載!けど、3つの楽章、全てがアレグロということで、単一楽章のコンチェルトが3つ並んでいるような印象を受けなくもないのだけれど... いや、19世紀のロマン主義が最も脂の乗っていた頃のジューシーな音楽が、3つ、次々と繰り出されるということが、ゴージャス!
続いて、ルビンシテイン... シャルヴェンカ誕生から21年を遡った1829年、モルドヴァ北部、ヴィフヴァチネツ(当時はロシア帝国領... )の、ユダヤ系のブルジョワジーの家に生まれたアントン・ルビンシテイン(1829-94)。ピアノを弾いた母から最初のレッスンを受け、間もなく才能を発揮。10歳にして最初のコンサートを開くと、神童としてヨーロッパ中をツアー。ショパンやリストと触れ合う機会を得て、西欧の最新の音楽をしっかりと吸収すると、ロシアに帰国。ロマノフ家の皇族たちの庇護を受け、セレヴの一員に... そんな華やかさに包まれたマエストロは、ロシアのみならず、ヨーロッパ中でも人気を博し、アメリカへも渡った。そして、ルビンシテインの仕事で忘れてならないのが、チャイコフスキーも学んだ、名門、サンクト・ペテルブルク音楽院の設立... って、何だかシャルヴェンカの経歴と重なるような... ということで、つい比べてしまう2人のコンチェルト。で、よりコンチェルトとしての一体感を感じられるのか?1864年に作曲された、ルビンシテインの4番のピアノ協奏曲(track.4-6)。いや、ロマンティックで、キャッチーで、まさに隠れた名曲!こういう充実したコンチェルトがあって、チャイコフスキーの名コンチェルト(1875)が続いたのだと思う。ヴィルトゥオージティに溢れ、華麗にして、ロシアならではの仄暗さを漂わせ、ドラマティック... かと思うと、リストのような煌びやかさに彩られたキャッチーなテーマが、聴き手を惹き付けて離さない。終楽章(track.6)なんて、もう、カッコよ過ぎ!ある意味、極めて19世紀的で、コテコテなのだけれど、変にアカデミックぶるより、ズバリ、コテコテ!な潔さが、クールかもしれない...
という、19世紀に活躍した2人のヴィルトゥオーゾを取り上げる、現代のヴィルトゥオーゾ、アムラン。それは、あまりに軽々と弾きこなされてしまって、呆気に取られる。つまり、アムランのスーパー・テクニックは、19世紀のヴィルトゥオーゾたちを凌駕している?それほどの次元を感じてしまうアムランの凄さ... その凄さを以って、かつてのスター・ピアニストが繰り出すヴィテルトゥオージティが鮮やかに捌かれると、思い掛けなくスタイリッシュに聴こえて... コテコテであることを屈託無く、さらりと響かせ、作品の魅力を飄々と引き出してしまうから、見事!そこに、マイケル・スターン(アイザックjr)の指揮、BBCスコティッシュ響による引き締まった演奏が、アムランのタッチと絶妙に呼応し、濃厚になりそうな東欧の19世紀の音楽を、キビキビと展開。雰囲気に流されず、作品そのものの魅力をきっちりと響かせて、巧い。アムランばかりでなく、マイケル・スターン、BBCスコティッシュ響の存在も光る!そうして、隠れた名曲は、ますます輝く!

RUBINSTEIN PIANO CONCERTO NO 4 SCHARWENKA PIANO CONCERTO NO 1
MARC-ANDRÉ HAMELIN ・ BBCSSO / MICHAEL STERN


シャルヴェンカ : ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 Op.32
ルビンシテイン : ピアノ協奏曲 第4番 ニ短調 Op.70

マルク・アンドレ・アムラン(ピアノ)
マイケル・スターン/BBCスコティッシュ交響楽団

hyperion/CDA 67508




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